文春オンライン
文春野球コラム

復帰して絶好調 広島・丸佳浩に学んだ「いい意味でリセットして」という言葉

文春野球コラム ペナントレース2018

2018/06/26
note

 丸選手が絶好調である。

 今年の春にダイビングキャッチというか、センター前の飛球を突っ込んでキャッチして猛スピードで一回転、みごと捕球したもののそのときに筋肉というか筋というか、専門的なことはわからないが、なんにせよ重大なケガをしてしまった。

 それから丸選手のいない試合が続いた。丸選手の安定感というのはただごとではない。背番号が9になってから。三番に固定されるようになってから。そして優勝するのではないかと我々ファンが思うようになった2013年頃からの。その年、カープは久々のAクラス入りをしたわけであるが。そして2014年、いよいよ優勝するのではないかというムードを久々に味わったのであるが。それは丸選手の充実と同じ歩みであった。

ADVERTISEMENT

 それよりもっと前の。万年Bクラスムードの時代。SNS上にも暗い、そして攻撃的な、陰惨な、内輪もめみたいな書き込みやツイートが溢れ、「みんなでちゃんと応援しようよ」みたいな気持ちになることも多かった。事実、悪口や汚い罵りに腹を立てながらもぐっと気持ちを抑えて、みんな前向きに、みたいなことを書き込んだことが何度かある。暴動を鎮静化できないものかみたいな気持ちだったにしても、ま、つまりは内ゲバである。

セ・リーグ再開後、3試合連続本塁打と絶好調の丸佳浩 ©時事通信社

丸選手がいない1カ月の寂しさ

 きつい季節だった。あの頃から丸選手は努力をしていた。サウナ風呂のテレビで見たような気がする。いまよりは若い丸選手がテレビに出ていた。いまのような安定感はまだなかった。いまのような頼もしさもまだなかった。将来の中軸、という雰囲気はあった。少なくとも私は感じていた。期待していつも見ていた。だが、いいときはよくても、よくないときはよくなかった。

 その丸選手がテレビ画面の中でジムトレーニングをしていた。すごい身体だった! ガンダムみたいな身体だった! パンプアップされた、凄い身体だった! ういういしい、少年のような顔だちからはまったく想像できない、言うならば顔とはアンバランスな、ガッチリと巨大化したボディを見て、私はうなった。

「そこまでしなければならないのか……やるべきことはやっているのだ……」

 丸選手がいないこの1カ月。4月末から5月末の1カ月。その寂しさはただごとではなかった。その寂しさをまぎらわすかのようにセンター、そして打順三番は入れ代わり立ち代わり。みんなよく頑張った。その頑張りとそれぞれの結果は現在の層の厚さに繋がっていて結果的には無駄ではなかったかもしれないが、やはり勝ちゲームのラスト、外野手が集まって展開されるトリプル・ジャンピング・ヒップ・アタックの一角に丸選手がいないのは寂しかった。

文春野球学校開講!