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“打のチーム”西武が優勝するために必要な「リリーフ陣の立て直し」

文春野球コラム ペナントレース2018

2018/06/29

 辻発彦監督が求める野球は、投手を中心としたディフェンス面の充実。これは、監督がプロ入りした時の広岡達朗監督の考えと一致している。加えて、足を絡めた機動力。常に先の塁を狙う意識の徹底だ。野球は点取りゲームだが、点を与えないことも併せて重要なこと。要するに、無失点ならば無得点でも負けはない。当たり前のことなのだが、これが野球の基本なのだ。

 現在、地球規模の話題はサッカーW杯。得点シーンが少ないので「面白くない」という人もいるが、競技の質が違うので比較するには乱暴すぎるか。ただ、子供の頃にスポーツを始める時、野球かサッカーかの選択を迫られることが多い。そのために敵対視する狭量さは、あまり持って欲しくない。1球ごとに考える「間」のある野球と、プレーが持続する「スピード」のサッカーとの違いも興味は湧く。

交流戦直前から不安を抱えるリリーフ陣

 さて、話がそれてしまったが開幕から好調を続けている西武が、交流戦直前から中継ぎ、抑えの投手陣が本来の力を発揮できない状態に陥っている。5月26日、27日の日本ハム戦(メットライフドーム)では、守護神の増田達至がともに延長戦で2イニングを投げ敗戦投手に。それまでのチームの戦いぶりとして勝ち試合は大勝のケースが多く、出番が少ないため調整の難しさもあったのも事実。

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守護神復活が待たれる増田 ©中川充四郎

 やはり、抑えを任される投手は僅差の緊張した場面で力を発揮し、調子を保っていくべきなのだが、なかなか思い通りには行かない。一旦復調気配を見せた増田は、交流戦の半ばまで4つのセーブを挙げるも、中盤以降は失点を重ね配置転換を余儀なくされた。一度ファームに落とし心身共にリフレッシュの選択肢もあるが、精神的にラクな場面での登板による復活の道になった。代わりの抑えには先発からファビオ・カスティーヨが回ったが、慣れない位置なのか配置換えから2試合連続失点している。タマの力は十分も、「気持ちの力」が不足しているのだろうか。

配置転換で力を発揮できるか、カスティーヨ ©中川充四郎

 じつは、増田一人だけの問題ではないのが首脳陣の頭の痛いところだ。シーズン序盤の勝ちパターンの中継ぎの武隈祥太、野田昇吾、平井克典(6月22日再昇格)、ニール・ワグナー(28日再昇格)も不調によるファーム調整を命じられた。この台所事情でなんとか首位争いをキープしているのが、先発陣の頑張りと打撃陣の援護によるもの。

 菊池雄星を筆頭に多和田真三郎、十亀剣、榎田大樹、ブライアン・ウルフなどが試合をつくっている。ここに来て高卒2年目のドラフト1位・今井達也の使える目途が立ったのも大きい。また、中継ぎとして5月に入団したデュアンテ・ヒースの存在も助かる。2014年シーズン途中に広島と契約し、翌年までプレーしたが数字的に貢献できず退団も、今季はBCリーグ・富山GRNサンダーバーズに所属し、日本の野球には慣れている投手。まだ登板数は少ないが、ストレートで三振を奪えるので頼れるセットアッパーとして認められつつある。今後の状況次第ではストッパーを任される可能性もある。

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