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UMS主義者、かく語りき――衣のユニクロ、住の無印良品、食のサイゼリヤ

楠木建の「好き」と「嫌い」 好き:UMS 嫌い:ブランド物

2018/06/12

住のM

 圧倒的インドア派の僕は室内にいる時間が長い。ということで、わりと家具には興味関心がある。とくにチャールズ&レイ・イームズやエーロ・サーリネン、ジョージ・ネルソンといったデザイナーの手によるミッドセンチュリーものが好物だ。

 10年前に仕事場を引っ越すとき、自分の好きな家具に入れ替えようと思い、「ハーマンミラーストア」に行って、ネルソンのデスクだのイームズのキャビネットだのを奮発して購入した。

 ついでに時計やごみ箱やコートハンガーなどの小物もこの際イイやつにしようと思ってそのお店を物色したところ、実に素敵なデザインの木製ごみ箱を発見。「これもください」と言ったら、「あー、これはうちで使っているもので、売り物ではないんです」との答え。「どこのですか、これ?」と尋ねたところ、「無印良品で売っています」。

©iStock.com

 そのときまで迂闊にも無印良品で買い物をするということがなかったのだが、さっそくお店に行ってみると、実にイイ感じの家具や生活雑貨が何でもそろっている。デザインがすっきりきっちりと統一されている。プレーンでシンプル。飽きがこない。目当てのごみ箱はもちろん、時計やファイルボックス、ペン立てなどを買い込んだ。以来、仕事場で使い続けている。

 自宅のソファはアルフレックスを使っている。きっかけはその頃に出た保科正の名著『アルフレックスと私とイタリアと』を読んだこと。その人間主義的な哲学にいたく感銘を受けた僕は、わりと値段は張ったけれども、迷わずアルフレックスを購入した。以来20年近く愛用している。

 ところが、その後もうひとつソファを買う必要が出てきた。このときは迷わず無印良品にした。これまたごくシンプルなデザインで、座り心地も寝心地もアルフレックスに負けず劣らずイイ。しかも価格は数分の一。

 無印良品のデザインに飽きがこないのは、それが独自の基準で練り上げられているからだ。それが証拠に、無印良品の家具や生活雑貨はほとんどが超ロングセラーで、デザインの変更は滅多にない。本当に良いものをつくれば、あとから新製品を出す必要はそもそもない。僕が仕事場で使っているごみ箱にしても、同じものが今でも売られている。新製品が目まぐるしく出てくる世の中にあって、このスローぶりがヒジョーにイイ。