昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

UMS主義者、かく語りき――衣のユニクロ、住の無印良品、食のサイゼリヤ

楠木建の「好き」と「嫌い」 好き:UMS 嫌い:ブランド物

2018/06/12

経営の王道

 価値あるものがリーズナブルな価格で手に入る。「イイ時代になったものだ」と先に書いたが、本当は時代のせいではない。UMSそれぞれが商売を通じて達成した成果に他ならない。消費者として価値を享受するだけでなく、僕はUMSを商売の王道を行く企業として高く評価している。

 何よりもこの3社はきっちりと儲けている。それぞれに競争が激しい業界にいながら、持続的に業界標準以上の利益をたたき出し、成長している。長期利益の創出、ここに商売の一義的な目標がある。古今東西、長期利益は経営の優劣を示す最上の尺度である。

©iStock.com

 何も「カネ至上主義」という話ではない。普通の競争のもとでは、長期利益こそが顧客満足のもっともシンプルかつ正直な物差しとなる。競争の中で持続的に利益が出ているということは、その企業の製品やサービスに価値があるということの何よりの証拠だ。まったく儲かってないのにお客が満足しているというのは、どこかに嘘がある。

 長期利益を稼いでいれば、投資家が評価し株価も上がる。配当も払える。雇用も作って守れる。給料も払える。サイゼリヤは労働集約的な外食産業の中で、社員の賃金水準がもっとも高い会社のひとつである。

 稼いでいれば、何よりも社会貢献ができる。株式会社という形をとる以上、最大にして最上の社会貢献は何といっても納税である。バンバン儲けて、バンバン納税。これがいちばん社会のためになる。

 一瞬だけ刹那的に儲けるというのではなく、それが持続可能な利益を追求するものであれば、「金儲け」はまったく悪いことではない。利益が出なければ、納税もできない。それでも道路は使うし、ごみの収集は来る。むしろ稼げない企業こそ、商業的にはもちろん、社会的にも悪である。長期利益はすべてのステークホルダーをつなぐ経営の基本線だ。UMSは商売を通じて確かに価値を創造している。

日本発のグローバル化

 周知のように、このところのUMSは海外へと商売を拡張している。とくにアジアではユニクロや無印良品は絶好調。レストランという純粋サービスの業態のグローバル化は物販に比べてハードルが高いのだが、サイゼリヤは中国で着実な成功を収めている。

 UMSは日本発のグローバル企業のひとつのモデルだというのが僕の見解だ。ポイントは、単純に「安い」のではないというところだ。「お、ねだん以上。」なのである(ちなみに、ニトリもイイ商売をしている会社として尊敬している。UMSNといってもよい)。デフレ真っ盛りの頃に取りざたされた、ひたすら低価格を追求する商売とは一線を画している。安さだけではアジアでは通用しない。

ドバイのMUJI店舗 ©iStock.com

 コストパフォーマンスといえばそれまでだが、UMSの商品やサービスは「パフォーマンス」の中身がイイ。顧客にとって実質的な価値にフォーカスしている。ちゃらちゃらフワフワしたところがない。

 グローバル化だ、グローバル企業だといっても、企業経営は出自からは逃れられないし、また逃れるべきでもない。とりわけUMSのような消費財企業についてはこのことがいえる。日本に限らず、アメリカでもヨーロッパでも、グローバルに成功した企業の基盤は母国の文化や特質にある。ラルフローレンにしてもマクドナルドにしてもイケアにしても、母国の文化を背負っていたからこそ、グローバルに独自のポジションを獲得できたのである。