昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

酒蔵が劇場に生まれ変わる!

平田 豊岡市の江原駅前です。駅の近くの空いてる商工会館で、日高町の旧町役場だったところと、地元の方が提供してくれる酒蔵、米蔵を改装して劇場にします。

内田 江原ってそんなに乗降客のある駅ではないですよね。普通の人はあまりご存じないと思うんですけど(笑)。

平田 神鍋高原というスキー場の最寄り駅で、一応特急が停まり、駅からインターまで歩いて行ける距離です。最初は私たち、そこに劇団の倉庫を借りたんですよ。劇団は全国公演するので、どこに倉庫があっても同じだし、倉庫代が東京の10分の1以下なので。倉庫機能を移したらすごく大歓迎していただいて、劇場も作ろうという話になり劇団ごと移ることになりました。

内田 実は江原は僕にとって非常に親しみ深い場所なんですよ。神鍋高原の旅館に、合気道と杖道の合宿で春秋2回、冬の凱風館のスキー合宿を加えると、年に5回通ってるんです。神鍋高原で合気道の合宿を始めてからもうかれこれ20年になります。でも、江原って、本当に何もないところですよ(笑)。

平田 かつては江原駅前の商店街は200店舗あったらしいんですよ。もともとグンゼと神戸製鋼の工場があって、日本中から女工さんたちが集まって栄えた街だった。その時代を知る70-80代の方たちは、うちの劇団が行くのが江原復興の最後のチャンスだと、ものすごく盛り上がってくださっています。

左 平田オリザさん ©鈴木七絵/文藝春秋

選挙に強くて、センスのいい首長がいれば

内田 うちの門人たちにも地方移住してる人が多いんです。やってることはさまざまですね。奈良の東吉野村に行った青木くんという青年は、そこに図書館と研究所を開きました。そこから世界に向けて学術情報を発信していく拠点を作りたいというので、「土着人類学研究所」なるものを立ち上げた。山奥の集落に移住して、そこに学術情報の発信拠点を作るというアイデアは聞いてびっくりしましたけれど、最近はけっこう注目されてきているみたいです。

平田 地方発の文化発信は、成果が出るのに10年20年かかるので、待てるかどうかが肝心ですね。支援する行政の側にもセンスが求められる部分です。首長さんは4年に1回選挙があるので、よっぽど選挙に強い首長さんで、しかもセンスがないと同じ文化政策を続けられない事情があります。センスのいい首長は得てして選挙に弱い(笑)。

内田 行政の一番の問題は「待てない」っていうことなんですよね。行政は単年度で予算を回してますから、その年に予算を投じていって、年度末に目に見える成果として数値が何か示されないと困るんです。豊岡市の中貝市長は何期目ですか?

平田 市町村合併前から入れると5期かな? 中貝さんは例外的に選挙強いです(笑)。コウノトリを復活させた名物市長で人気があるんですよ。コウノトリって、田んぼにフナとかドジョウがいないと生きられないんですね。しかも里山で暮らすので、人間に対してぜんぜん警戒心がなくて普通に田んぼにいるんですよ。県にコウノトリの郷公園を作らせて、周りの農家を説得して無農薬の田んぼを広げていった。冬でも田んぼの水を抜かないようにし、コンクリートで固めたあぜ道も全部壊して、生き物が通れるようにした。

内田 偉い人ですねえ!

この記事の画像