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連載尾木のママで

これからの時代に必要な力は「体育会的風土」では培われない――尾木ママ語る

尾木のママで

2018/06/08
イラスト 中村紋子
イラスト 中村紋子

 日大アメフト部選手による悪質タックル事件。関東学生アメリカンフットボール連盟(関東学連)は内田正人前監督と井上奨(つとむ)前コーチの発言はウソ、反則行為への指示はあったと認定。両者に除名処分を下した。後は警察等の捜査機関が事実関係など解明してくれると信じて、ボクは指導者と選手の関係に注目したい。

 関東学連の調べでは選手間で「はまる」と表現された内田前監督の指導法が問題に。有望な選手に対し全員の前で名指しで酷評する、理不尽な要求を出しひたすら厳しい練習を課すなどを続け精神的に追い込む。これを対象者を変えて繰り返す。これ、凄い「パワハラ」「いじめ」じゃない!

 選手にプレッシャーをかけて成長を促す指導・育成法は昔からあるけれど、今回のは明らかに常軌を逸している! 危険タックルをした選手は、指名されていた日本代表も、内田前監督から辞退するよう命じられ、疑問も不満も口にできなかったという。また、反則プレーを「やらない選択肢がなかった」とも。監督に質問さえできない関係、選手の人格まで歪めるやり方は、教育とは呼べないわ!

 更に内田前監督は常務理事として予算も人事も握る「大学ナンバー2」の権力者だった。選手はおろか他の教員やコーチが監督の指導に意見できなくなるのは当然。正常な相互関係性が育まれる筈がないわ。

 これからの先行き不透明なグローバル時代に必要なのは、問題解決力や批判的思考力。言われたことに従うだけの体育会的風土では培われない。指導者と選手の関係であっても、相手の人格を尊重し、忌憚なく意見を出し合う関係を作り出せる環境整備が大事ね。今年度中に創設予定の学生アスリート支援を目指す日本版NCAAにも期待したい。

 レスリングの伊調馨選手へのパワハラ問題も然り。今こそ日本のスポーツ指導のあり方を根本から見直す時機ね。