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経団連、中西新会長でも「モノ言う財界」になれないワケ

2018/06/11
英原発受注で日本政府の支援を受ける ©共同通信社

 5月31日、中西宏明・日立製作所会長(72)が「財界総理」と称される経団連新会長に就任した。

「米倉弘昌氏、榊原定征氏という軽量級の会長が続いただけに、『本格政権』と見られています。新聞・テレビでも『モノ言う財界復活か』と取り上げられていますが、そんなことはありえませんよ」

 と、苦笑するのは経団連関係者だ。

「それは日立の内情を見れば明らかです」(同前)

 日立の大きな経営課題となっているのが、英国・アングルシー島で進める原発新設だ。

「ホライズン・プロジェクト」と呼ばれる原発2基建設は、2012年に日立が約900億円で買収したホライズン・ニュークリア・パワーが主体となって進めているもの。

「しかし、1兆5000億円と見込まれた総工費は、安全対策費用の増加などで、2倍の3兆円超に拡大し、岐路に立っています」(経済部記者)

 5月3日には中西氏がメイ首相と会談し、2兆円の融資を引き出したばかりだ。

 約3兆円の事業費のうち日立、日本の政府・企業連合、イギリスの政府・企業連合がそれぞれ3000億円ずつ、計9000億円を出資する。加えて、イギリス政府・金融機関が2兆円を融資する。メイ首相から引き出したのが、これにあたる。

 加えて、中西氏はメイ首相に「35年にわたる高値での買取り保証」も要望しているが、これは叶いそうにない。

「中西氏は最低でも市場価格の1.6倍での買取りを要望していますが、最終的に電気料金に転嫁されるだけに、政治的に受け入れ困難」(同前)

 中西氏がここまで粘るのには、理由がある。東日本大震災以降、原発はハイリスク・ローリターンの事業になった。経団連会長を輩出してきた東芝が、原発事業で破綻寸前に陥ったのは記憶に新しい。

 だが、日立は原発についてグローバルかつ中長期的な収益事業として前向きな姿勢を崩していない。ホライズン・プロジェクトについても、すでに約2000億円を投じており、後戻りは難しいのだ。

「原発は人類の将来に必要な技術だ」と強調する中西会長。日立にとって、原発事業で日本政府の支援は生命線だ。政府の耳に痛いことを言うなど、望むべくもない。