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鈴木亮平「自分に才能はあるのか、そんな悩みを抱える人へ」

映画『羊と鋼の森』――クローズアップ

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鈴木亮平さん

「ピアノの調律師と役者には、共通点が多い。ものづくりや表現という点で、大いに共感できました。中でも一番は、両者ともアーティストではなく職人だということ。役者は、監督、脚本、お客さん、それぞれから求められるものがある。その中でどう個性を出して、認められるか」

 こうしみじみ語るのは、現在放送中の大河ドラマ『西郷どん』で主人公の西郷隆盛を演じている、鈴木亮平さん。新作映画『羊と鋼の森』では、主人公の若い調律師・外村(とむら)直樹(山﨑賢人)を優しく導く、先輩調律師・柳伸二役を務める。

 宮下奈都さんの原作小説は、2016年の本屋大賞を受賞した傑作。森の奥深くで少年時代を過ごし、高校でたまたま出会った板鳥宗一郎(三浦友和)の調律の音に惹かれた外村は、卒業後、故郷の森を思い描きながら、調律師として成長していく。羊とはフェルト製のハンマー、鋼とはピアノ線を指す言葉だ。

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「柳はまだ、後輩を全部包み込むほど成熟した人間ではないんです。でも外村の少し前を歩いているからこそ、自分が得た気付きやかつて悩んだことを教えて、ちょっとだけ彼を引っ張り上げてあげる。そんな風に外村に影響を与えられたらと思って演じました」

 脇役のときは「自分が作品という大きなパズルのどのピースになるか」を常に考えると語る鈴木さん。全体の中の立ち位置を把握した上で、今回も役作りを徹底した。調律指導は1回あたり1時間半、計6回みっちりと受け、整音(基準音に沿って音を整える作業)については、一通りできるようになったという。

©2018「羊と鋼の森」製作委員会

「もう1つ、意外と一生懸命練習したのはドラムです(笑)」

 一見明るい柳だが、過去、内面に抱えるものがあった。それをリズムや調律によって救われたという役どころだが、

「1曲丸々、スネアまで叩けるようにしました。柳は音で満足する人なので、きちんと脇を締めて規則正しく意識して演奏していました」

 本作は、上白石萌音(もね)・萌歌(もか)姉妹が初共演したことでも話題だ。外村がピアノの調律で訪れる先の家に住む双子の高校生、佐倉和音(かずね)・由仁(ゆに)役で、2人とも、ピアノを続けるかどうかの岐路に立っている。

「音楽の話かと思いきや、実は人生の選択の話なんです。外村も佐倉姉妹も、自分がどの職業を選んでいくか、自分に才能はあるのか、そもそも才能って何なのか。そういうことに悩んでいます。今まさに同じ悩みを抱えている人たち、また通りすぎてきた人たちみんなに観ていただきたいです。音が静謐でとても美しい作品でもあるので、劇中の音楽、ピアノの音一つ一つ、森の音、全部楽しんでいただけたら嬉しいです」

 全編北海道での撮影となった本作は、森や街の映像もとりわけ美しい。

すずきりょうへい/1983年、兵庫県出身。東京外国語大学(英語専攻)卒業。2006年俳優デビュー。以降ドラマ『天皇の料理番』、『銭形警部』大河ドラマ『西郷どん』、映画『俺物語!!』、『忍びの国』など出演多数。現在『鈴木亮平の中学英語で世界一周!』が発売中。
公式Twitter @ryoheiheisuzuki

INFORMATION

『羊と鋼の森』
6月8日(金)より全国東宝系にて公開。5月に天皇皇后両陛下が、特別試写会をご覧になったことでも話題に。原作は本屋大賞受賞作、110万部突破のベストセラー。
http://hitsuji-hagane-movie.com/

羊と鋼の森 (文春文庫)

宮下 奈都

文藝春秋
2018年2月9日 発売

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