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2018/06/12

是枝監督「祝意辞退」の真意とは

 もうひとつ、この映画はタイトルの印象へのバッシングに加え、是枝監督の民主主義観が保守的な人々を刺激しました。パルムドール受賞後、フランスのフィガロ紙が「安倍首相が珍しく一切の祝福コメントを出していない」と報道。その後、林文部科学相が是枝監督を文科省に招いて祝意を伝える考えを示しましたが、監督が自身のホームページに「公権力とは潔く距離を保つ」と記して辞退を表明しました。その一連の出来事と、『万引き家族』が国の助成金で作られていることに矛盾を感じた人がいたようです。

是枝裕和監督 ©getty

 このことがクローズアップされたのは、攻撃的な保守派の人々の声の大きさと無縁ではないでしょう。タイトルだけで激しい拒否反応が生まれるような状態では、監督の今の一挙手一投足が思いがけない意味を持ってしまいます。祝意を受けるために文科省へ赴けば、それはまた監督の意図を越えた、不本意なプロパガンダに使われてしまうかもしれません。

「日本映画の魅力や多様性を強化し、その基盤を維持する」ために

 改めて、文化庁の「日本映画製作支援事業」の定義を確認してみましょう。「我が国の映画製作活動を奨励し、その振興を図るため、優れた劇映画、記録映画の製作活動を支援する。新たに、日本映画の魅力や多様性を強化し、その基盤を維持するため、中小を含む制作会社や新進映画作家向けの助成枠を設ける」。

 多様性の強化をうたっているのだから、審査はあっても検閲が入ってはいけませんし、もちろん国威発揚映画を撮らなければならないような条件はありません。日本は「表現の自由」が約束された国であり、助成金に対するプロパガンダ的な見返りを求めないのが本来の姿です。

 助成金は「優れた劇映画」を作るための支援です。カンヌでパルムドール受賞を果たした『万引き家族』は、まさに正しく助成金の目的が達成された例といえるでしょう。

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