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「官僚は安倍官邸の下僕と化した」片山善博×前川喜平

改ざん、隠蔽が蔓延する霞が関の奈落

片山 4月10日、加計学園問題に新たな展開がありましたね。朝日新聞がスクープした愛媛県職員作成のメモには、柳瀬唯夫首相秘書官(当時)が2015年4月2日に加計学園関係者や愛媛県、今治市の職員と官邸で面会し「本件は、首相案件」と語ったことが記されています。

 前川さんは前文科事務次官として、加計学園の獣医学部新設に向けて官邸からの働きかけがあったことを告発し、渦中の人となった、いわば当事者。メモをどうご覧になりましたか。

前川氏 ©文藝春秋

前川 この日の面会については昨年から報じられていましたが、証拠がなかった。昨年7月に開かれた獣医学部新設をめぐる国会閉会中審査で、私とともに参考人として招致された柳瀬氏は「記憶にない」という発言を繰り返していました。どこかに裏付けとなる文書は必ず存在しているはずだと確信していましたが、やっと、ミッシングリンクが見つかったという思いです。

片山 あれはすごく不自然な答弁でした。あれを聞いたら、本当は会っているんだろうなと誰もが推測します。官邸にとって致命的な打撃を与えないような表現振りを考えたのでしょうが、「往生際が悪い」というのが率直な感想です。

柳瀬秘書官は「やらされモード」

前川 この面会時のメモを読むと、これまで加計学園が15回にわたって申請を却下されていた構造改革特区ではなく、国家戦略特区への申請を促し、そのための知恵をつけてあげるための機会だったことがよく分かります。さらに、メモによれば、藤原豊氏(当時地方創生推進室次長)は「新潟市の国家戦略特区の獣医学部の現状は、トーンが少し下がってきており、具体性に欠けている」などとライバルの状況も伝え、柳瀬氏は「本件は、首相案件であり、藤原氏の公式ヒアリングを受ける形で進めて」とまで指導している。加計学園の獣医学部新設が極めて不公正な形で安倍首相の意向を背景に進められたことを裏付ける決定的資料です。

片山氏 ©文藝春秋

片山 思わず笑ってしまったのが、メモの中で柳瀬氏が「自治体がやらされモードではなく、死ぬほど実現したいという意識を持つことが最低条件」と発言した部分。でも答弁などを見ていると、柳瀬氏自身が「やらされモード」ですよね。

前川 皮肉ですね(笑)。文科省に残っていた内閣府からの「訪問予定メール」でも、訪問者の一番上に名があるのが加計学園でしたから、やはりこの面会は加計学園側が仕掛けたのだろうと思います。なぜ加計学園が官邸で首相秘書官と会うアポイントが取れたのか。安倍首相が、腹心の友である加計孝太郎理事長に頼まれて、柳瀬氏に面会を指示したと考えるのが自然でしょう。加計側の一番の目的は、愛媛県と今治市の職員を官邸に連れて行くことで「本気でやれ」「ちゃんとカネを出せ」と印象付けることだったはずです。

片山 私は自治官僚や鳥取県知事、総務相を務め、それぞれの立場から多くの政権を見てきました。その経験から言うと、安倍政権は実に不思議な政権だと思っています。本来、政権は巨大な官僚機構を動かしており、一つひとつの案件に細々と指示を出し、進行管理する余裕はない。だからまずミッションを示した上でルールを設定し、その中で政権の意に沿って闊達に働かせるのがリーダーの務めであるはずです。しかし、安倍政権は自分の関心事項に個別に首を突っ込んでいる印象です。これは、まだ権力のないヒラの国会議員が各省に働きかける「口利き」の手法です。

前川 興味深い指摘ですね。