昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

トランプ大統領VS.金正恩委員長、なんとなく会って握手をするの巻

世界政治のバラエティーショー化がどんどん進んでいる話

2018/06/14

衣が大きすぎるエビフライ

 北朝鮮が本気で路線変更している可能性は低いにせよ、うっかり本当に非核化が進んでしまうとそれはそれで面倒です。 日本は拉致問題があるとはいえ、拉致問題と非核化と北朝鮮経済開発とがセットで話が降ってくることになりかねません。結局は朝鮮半島の安定にもっとも関心を払う中国が開発資金を貸す仕組みを作るのでしょうが、今回合意した朝鮮半島の非核化に在韓米軍の撤退は含まれるのかとか、在韓米軍にうっかり本当に撤退されたとき、米中対立の最前線が我が日本列島となり、まーーた日本不沈母艦論が出てしまうのかと思うとゲンナリ致します。

 面倒くせえ。面倒くせえよ北朝鮮問題。東アジアの安全保障を考えるにあたって、しっかりと日本国民の返還を北朝鮮に飲ませることができるかどうかは重要な課題ですけど、エビを食べたいのについている衣が大きすぎるエビフライみたいになっていて、これでは日本の拉致被害者は「日本が軍備に後ろ向きだったばっかりに、いつまでも帰ってくることができない」という話になってしまう。

 逆に、北朝鮮が約束守らなくてトランプ大統領がマジおこ状態になったら先制攻撃も起きかねない。「おまえ、非核化に努力するって言ったよな(時期も内容も合意文書には明記してねえけど)」って言いがかりをつけられる可能性は充分にある。だって、いままで北朝鮮は何度も国際的な合意を反故にして、時間稼ぎをするのが国是でしたからね。のど元過ぎたらビキニ環礁上空でミサイル発射ついでに大気中核実験でもやりかねない。でも、私には「いままでさんざん合意を破ってきた北朝鮮」を知ったうえで、敢えて緩い合意をし、期待感を高めておいて、ちょっとしたことでトランプさんが「北朝鮮は約束を破った。お前らより俺の方がたくさん核兵器を持っている」って蹴っ飛ばすことぐらい考えていると思うんですよ。そっちのほうが、バラエティーショーとして盛り上がるから。 そうなれば朝鮮半島統一どころか日本の核兵器開発への道筋までできかねない勢いです。 

©getty

おうお前、いま立ち退けばいい物件斡旋してやるからよ

 もうここまで来ると、国際政治が学問の世界であーだこーだ分析するより、その辺の不思議な性格の不動産屋のオヤジが地上げしたい駅前の雑居ビルに入ってるやんちゃ御曹司にいちゃもん付けてる構造に近いと思うんですよ。おうお前、いま立ち退けばいい物件斡旋してやるからよ、みたいな。

 その中小企業のおっさんマインド丸出しの不動産屋の出入り業者が我らが安倍ちゃんだって思えば幾分気が楽になるんじゃないですかね。どうせろくでもない方向にしかこの問題が転がらないと割り切って、それでいて、一喜一憂せず、過去に起きたことはなるだけ忘れず、イメージに振り回されないようにじっと成り行きを見守りながら、いま私たちに必要なことは何かを見定めることなんじゃないでしょうか。

 まあ、歴史的な会談まで漕ぎ着けた、ってだけで、トランプさんの剛腕は凄いなって思うんですが。あくまで結果論ですが、理知的で平和主義でもあったオバマ前大統領では絶対に為し得ないような、米朝首脳会談まではできちゃったんだから。それが、世界のためにどれだけ良い出来事だったのかは別としても。

この記事の画像