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連載近田春夫の考えるヒット

高橋優の過剰なポジティブさで追い込まれる人を心配してみた――近田春夫の考えるヒット

2018/06/20

『プライド』(高橋優)/『知らないんでしょ?』(平井堅)

絵=安斎肇

 あくまで俺の乱暴な主観によるところではありますが、昨今よく耳にする、いわゆる売れているjpop系男性シンガー/ソングライターたちの書く歌詞に感じてしまって仕方ないのが、「きっとこのヒト堅いんだろうなぁ!」と思わずにはいられぬ、一種オーラとでも呼ぶべきものの強さのことである。

 まず羽目は外さぬであろう佇まい、といい換えてもいいが、そうしてみると、たしかにjpopの歌に、厄介だったりヤバそうだったりと、そんな男の出てきたためしは、私の知る限りでは、そうはない。

 オォ、そうだ。思い出した。そこでしたですね、歌謡曲とjpopを分けるひとつの決定的な違いってぇのは! あっちには“訳あり”の男の設定なんていくらでもある。

 閑話休題。

 今週の高橋優『プライド』なども、まさにそんな意味合いに於いて、実にjpopらしい“倫理感”に満ち溢れているといっていい作品である。

 歌詞の骨子をかいつまんで説明しておけば、おそらくは何かの原因で社会との折り合いを上手くつけられなくなってしまったかと思われる“君”へのアドバイス、いやメッセージなんですかねぇ? それはともかく、読んでいくと、

 ♪どこを見渡してみても希望がないのなら/君自身がそれになり 誰かを照らせるってことさ

 であり、また、

 ♪立ち上がれその心よ/焼き尽くせ命の火を

 であり、そして更には、

 ♪生きていく意味を作り出すのさ 何を失っても

 といった風情の展開である。歌詞カードからの数行の引用だけでも、相当すごいことになっているのは、お分かりいただけるだろう。

プライド/高橋優(ワーナー)作詞・作曲:高橋優。安齋肇展開催中の秋田県横手市出身。札幌の大学進学後にストリートライブデビュー。

 まぁね、それは歌ですからね、ついつい情熱的に、大言壮語をやらかすってのも、わたくし作り手もやっている身なので、よーくわかります。

 ただ、この“君”であるが、行間から斟酌するに、結構体調的には下手をすると“鬱”をわずらっていることも充分にあり得る、そんな印象だ。だとしたら……そうした患者(?)にこうした過剰にポジティブな励ましは却って逆効果ってなことも、最近では常識の範疇な気が……。

 俺が――余計なお世話とは百も承知――つい心配してしまうのは、例えば高橋優の超熱心なファンで、しかもこの“君”にドンピシャなシチュエーションだったりするような人が、歌詞を真正面から受け止めて、追い込まれちゃうっつうか、益々病状が進んでしまうとか?

 勿論。そんなことある訳もないとは思いますけれど、このご時世大企業の危機管理がどうのこうのってよくニュースなんかで叫ばれているのを目の当たりにしているものといたしましては……とかなんとか、この歌詞のド真面目さ、久々になかなかツッコミがいがあって楽しめました。

知らないんでしょ?/平井堅(アリオラジャパン)作詞・作曲:平井堅。44枚目の本シングルはドラマ『未解決の女』主題歌。

 平井堅。

 ジャケットの顔の写真さぁ、絶対悪ふざけよね? 最高!

今週の食通「電車の中吊り広告をぼんやり見てたら、今週の文春に面白そうな記事があるなと思ってさ、家に届いた見本誌を開くと、載ってない。週刊新潮の方だったよ。文春の“中国食品”ネタのパクリ企画だろうけど、危ない国産食品のほうがやっぱり気になるじゃん(笑)」と近田春夫氏。「オレはレストランでも味の素を頼んじゃう男だけどさ!」

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