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夭折の非正規社員が遺した歌を、私たちはどう読めばいいのか?

32歳で死した青年の歌集『滑走路』が訴えかけるもの

2018/06/17

効率化 進めて気づく 俺が無駄

「サラリーマン川柳」である。今年の傾向は「会社でも家庭でも奮闘するサラリーマンの姿を詠んだ作品が多く集まりました」(注1)。“奮闘”の文字に、「かりあげクン」や「タンマ君」の姿が重なってしまうが、こうした“気楽な稼業”の余裕のあっての自虐がサラ川だろう。

 そうした余裕のラチ外にいた、「非正規歌人」が話題である。

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SNSで話題になった32歳が遺した歌集

作業室にてふたりなり 仕事とは関係のない話がしたい

 作者は非正規雇用の身であった、もし時給制であったなら、「おしゃべりしている間も給料が……」と言われるであろう。そんな境遇だから、顔を合わせながらも話し込むこともなく、かえって話がしたくなる。恋愛の相手でなくとも、そんな気持ちになるであろうか。

 この短歌の作者、萩原慎一郎は32歳で自ら死した。「非正規として働きながら詠んだ短歌に、いま静かな共感が広がっています」。そんなふうに紹介されるNHK「ニュースウォッチ9」内での「“非正規”歌人が残したもの」や、番組をまとめた記事(注2)がSNSなどで話題となる。

頭を下げて頭を下げて牛丼を食べて頭を下げて暮れゆく

消しゴムが丸くなるごと苦労してきっと優しくなってゆくのだ

萩原慎一郎『歌集 滑走路』(角川書店)

 心をすり減らしながら生きる苦境がうかがえる。これらを収める萩原の『歌集 滑走路』(KADOKAWA)は、Amazonで品切れが続いている。