昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

連載THIS WEEK

パチンコ、競馬、株に愛人宅購入
24億円使い切った元部長の「欲」

source : 週刊文春 2016年6月16日号

genre : ニュース, 社会, 企業

親会社は国内第5位の製紙会社
Photo:Kyodo

 食欲、財欲、色欲、名誉欲、睡眠欲――。仏教では人間の欲望をこの5つに分けて教えることがある。これらの欲望を克服していけば悟りへの道も開けてくるのだが、その真逆を一つ一つこなしていこうとした男がいる。警視庁が6月1日、北越紀州製紙の子会社「北越トレイディング」のカネを着服したとして業務上横領容疑で逮捕した同社元総務部長、羽染(はそめ)政次容疑者(60)。会社から引っ張り出した金額は、しめて24億7000万円。

「羽染は経理担当として北越紀州製紙から出向し、2000年から15年間にわたり会社のカネを着服していました。この子会社には担保などにあわせて一定金額まで自由に借り入れることができる口座があり、ここから小切手を振り出しては、換金していたそうです。この口座の存在をある時期から会社に隠し、経理書類も誤魔化していたことから、いわば内緒の『打ち出の小槌』を手に入れたようなもの。銀行側の問い合わせで昨年ようやく発覚して解雇されました」(警視庁担当記者)

 この羽染容疑者、出向当初の1999年ごろはまじめに働いていたというが、ひとつだけ、弱点というか趣味があった。パチンコだ。パチンコで作った借金の穴埋めに着服を始めたというのだ。欲の追求は、そのころから始まったという。

「当初はパチンコの借金の穴埋めで金額もたかがしれていましたが、何しろ会社が一向に気付かない。そこで競馬、株投資と段階を踏み、さらには性格もだんだん大胆になっていき、愛人を複数もうけました。愛人とは10万円単位のランチを重ね、ついにはマンションを買うまでに。周囲には『競馬で儲けた』とうそぶいていたようですが」(同前)

 ロマンスグレーの髪型に清潔な身なりで、社内ではそれなりに人望があったという。製紙業界では11年に大王製紙の御曹司がカジノに会社のカネを数十億円注ぎ込んだ事件に絡んで逮捕されたのも記憶に新しい。今回の子会社は自動車教習所の運営が主体だったとはいえ、製紙業界周辺はどうもどんぶり勘定が度を越しているようだ。

 発覚後、妻からは離婚を突きつけられた羽染容疑者。逮捕で名誉を失い、留置場で眠れぬ夜を過ごすとすれば、五欲克服までの道は意外と近いかもしれない。