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「加計学園」理事長の記者会見 不信感しか残らなかった原因とは?

臨床心理士が分析する

2018/06/20

人は真実とは違うことを言おうとすると……

 話し方や言葉使いからも、真実を話しているようには感じられない。

 愛媛県への誤った情報について「担当者に伝えるよう何らかの指示があったのか」と聞かれた加計理事長は、目を瞬かせると「担当者が」と言い、そのまま「あ~う~」と言い淀み、「そのような誤解を生むようなことを言ったことに」とさらに間を空けながら説明した。

 このタイミングで記者会見を開いた理由について聞かれた時も同様だった。

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 人は真実とは違うことを言おうとすると、頭の中にある真実を抑制する必要がある。すると言い淀んだり、言い間違ったり、話の途中に不自然な間が空いたりする傾向が多くなるのだ。

「総理に対して獣医学部の話はしなかったか」など、答えたくない質問には、「はい」と短く返答をした加計理事長。真実を話そうとする人は、それを証明しようと詳しく細かく説明をしようとするものだ。同じ質問を繰り返されれば、前とは違う情報をそこに少しでも加えていこうとする。だがそうでなければ、同じ質問をしても、短く答えるか、同じことを繰り返すだけだ。「覚えていません」「ありません」「思いませんでした」など、短く同じ答えを繰り返している様子は、下手に説明して辻褄が合わないことを言わないようにしたとしか、聞こえない。

会見は2時間前に開催が通告され、わずか25分で切り上げられた ©共同通信社

「獣医学部新設も加計ありきだったのでは」と問われると、淡々とした表情で国家戦略特区へと話をすり替えていく。自分たちを、虚偽の報告を行って国会を停滞させた側ではなく、「申請者側」と答えた時も、自分たちを弱い立場へ方向づけ、そうせざるを得なかった的なイメージへとすり替えてしまう。この論法も、真実を話していないのではと思わせる要因だ。

 国会を停滞させたことについて「申し訳ない」と言いながら、表情は変わらない。この会見中、何度も申し訳ないという言葉を口にしたが、声の調子も変わらず抑揚がないため、その発言に感情がこもっていないことがわかる。だから言葉に合わせて、きっちり頭を下げることがない。冒頭、頭を下げた時も表情を変えることもなく、口先だけの実にあっさりしたもの。頭を下げながら記者たちを見続け、その反応をうかがっている形だけの謝罪でしかない。

左目だけ一瞬、微妙に引きつったように瞬き

 だが、そんな加計理事長の表情がひときわ強張ったのは、「安倍首相に獣医学部の話をしたのはいつ?」と聞かれた時だ。目の表情が暗くなり、口元にも力が入る。さらに突っ込まれて、仲の良さを質問されると、左目だけ一瞬、微妙に引きつったように瞬きをした。疑われていると感じたのか、何度も視線をそらす。安倍首相との関係については、やはり気を使っているのだ。

 それなのに、部下が首相の名前を使って虚偽報告をしても「虚偽発言と言えば虚偽の発言なんだろうが、前に進めるために」と悪びれる様子もなく平然と答えていた。やったもの勝ちの不遜さとでもいおうか、巧妙な経営者のイメージがついてくる。

 安倍首相の「(虚偽報告をした加計学園に)抗議する必要がない」という参院予算委員会での答弁を聞いていても、虚偽報告をしたという加計学園の事務局長が、今治市に1人で謝罪に行き、「つい言った」「言ったんだと思う」とへらへらしながら説明していたのを見ても、安倍首相と加計理事長、二人の間に何もなかったと言われて、それを鵜呑みにするのは難しい。

 会見を早く終わらせようと、最後にはいい加減な生返事を繰り返し、「もう、もう」と何度も司会の方を向いていた加計理事長。虚偽報告について「指示はしていない」と言うが、タイミングを計ったかのように記者会見した経営者が、首相の名前を利用しない訳がないと思うのは、果たして私だけだろうか。

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