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米韓軍事演習中止 「日本への悪影響」を米国専門家が警告

2018/06/24
今年4月に行われた米韓軍事演習 ©共同通信社

 6月12日の米朝首脳会談は文字通り、全世界の関心を集めた。その結果をどう読むかは意見がわかれるが、会談の最大目的だった北朝鮮の非核化の行方は今後の米朝間のやりとりと北朝鮮内部での作業の進展にかかっている。

 一方で日本にとって気がかりなのは、日本人拉致事件の行方に加え、トランプ大統領が発表した米韓合同軍事演習中止の方針である。

 大統領はその理由を「北朝鮮との非核化の交渉を進めている最中に北に対して挑発的な軍事演習は止めたほうがよい」と述べた。

 だが北朝鮮の軍事的脅威を構成する戦力は核と非核の両面で実際にはまだ全く減っていない。その脅威を抑える目的で在韓米軍が駐留し、米韓軍事演習を実施してきたことは言うまでもない。

 北朝鮮の軍事的脅威が“野放し”のまま、米韓軍の抑止力が減るとなれば、日本の防衛にも当然、影響を及ぼす。トランプ大統領は在韓米軍撤退の可能性までを口にしており、その懸念はさらに深まる。

 このままだと今年8月に予定された米韓合同の「乙支(ウルチ)フリーダムガーディアン」と呼ばれる大規模演習は中止の見通しが強い。これには米側の連邦議員や専門家の間で反対の声がある。

 米陸軍大学教授で東アジアの軍事情勢に詳しいラリー・ウォーツエル氏は「演習中止は北朝鮮の脅威への抑止の弱化だけでなく、中国の戦略意図にも合致するので問題が多い」と指摘する。中国は従来から、東アジアからの米軍の撤退を望んでおり、合同演習の中止も、5月の中朝首脳会談で中国側から、北朝鮮に働きかけたという報道もある。

 在韓米軍はこの種の大規模な合同演習がなくても、個別部隊の交流や司令部間の机上作戦、恒常的な協議で効率的な抑止態勢を保持できるという。だが演習中止は中国の軍事威力を高める効果がある。

 尖閣問題などで日本にも敵対性のにじむ軍事姿勢を保っている中国の威力の高まりは、日本の安全保障にも悪影響を及ぼすといえよう。

 ウォーツエル氏は、「日本は対米同盟の強化のためにミサイル防衛など米軍との協力の拡大がさらに必要となるだろう」と強調する。東アジア情勢は風雲急を告げている。