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童話ではない! 現代版「かぼちゃの馬車」の落とし穴

家主が泣いた…… サブリースの恐怖とは

2018/06/25
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「不動産投資」はもはや特殊なことではない

 とはいっても、「不動産投資」に手を出すのは特殊な人だと思うだろう。

 だが、最近は「主婦」「OL」「20代」など、これまで不動産経営に縁がないと思われてきた人たちが「家賃収入何千万円を実現」とタイトルに入った「不動産投資関連本」が多く出版されるようになった。

 かつては資産をそれなりに保有している特定の人たちしかできなかった不動産投資がサラリーマンはもちろん、主婦やOLまでできる時代になったのだ。

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(3)の不動産投資が身近になってきている。

 収益不動産情報サイトの「健美家」の会員数も近年急増しており、3年で3倍に会員が増加。現在7万人を超える。

「将来不安」を解消するための「不動産投資」が、金融機関の「融資姿勢の緩和」により増えてきたのだ。

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 一方、都心をはじめ大都市圏の不動産は2020年のオリンピックを前に上昇傾向にある。もともと金額の高い新築は融資が受けやすくなったとはいえ、サラリーマンには買えない。そこで中古不動産となるのだが、(4)の中古物件もまた値上がりしていた。

 中古物件を購入できたとしても、価格が高くては収益性が低くなる。

 そんな中で、「かぼちゃの馬車」は「都内」の「新築」で「利回り8%」というサラリーマンたちが理想とする要素を含んだ不動産を販売したのだ。

 そこに飛びつくサラリーマンが多かったのも理解できるだろう。

“サブリース”の落とし穴

 ただ、それでもなお、不動産はもちろん賃貸経営についてわからない素人のサラリーマンでは購入はできても借金を返済できるだけの経営ができるか不安だ。

 そんなサラリーマンたちに最後の一押しになったのが、(5)の「サブリース」と呼ばれる運営方法だった。

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 サブリースとは、オーナーから運営会社(管理会社)が1棟丸ごと借り上げる契約で、オーナーとしては、一部屋一部屋の契約の有無にかかわらず毎月一定の家賃が運営会社から支払われるというメリットがある仕組みだ。

 賃貸経営の最大の不安は空室の増加により家賃収入が減ってしまうことにある。家賃収入が減ってしまうと、収益が減るだけでなく、借金返済にも影響が出てくる。最悪、家賃収入よりも借金の返済額の方が上回ると自分の預金から切り崩して返済しなくてはならないのだ。

 一方、サブリースであれば、空室にヤキモキする必要はなく、運営会社が一定の家賃を振り込んでくれる。「それなら安心だ」と思って契約する人は多い。

 だが、サブリースをする運営会社を過信すると、今回のような「家賃不払い」が発生した場合オーナーたちは、まさかの「家賃収入ゼロ」という最大のリスクを負うことになるのだ。