文春オンライン
柴崎岳と大迫勇也 “寡黙なふたり”はなぜチームの中心になれたのか

柴崎岳と大迫勇也 “寡黙なふたり”はなぜチームの中心になれたのか

2018/06/27
note

「サイドで出るなら、出ないほうがいい」

 そして大迫が示したフォワードとしての矜持は、2014年に1部ケルンへ移籍しても保たれていた。

 ケルン2シーズン目の15-16シーズン。ケルンの1トップにはフランス人ストライカーが起用され、大迫はサイドやトップ下などでプレーしている。トップ下ならまだしも、サイドでのプレーではまったく彼の強みが見られなかった。高い技術力があるから器用にこなすことはできても、便利屋として使われている印象が拭えなかった。2016年春に見た試合。サイドで出場し、相手を後ろから追いかけるような守備をする姿を目にし、移籍をしたほうがいいんじゃないかとすら思った。実際、ドイツメディアからも大迫の移籍報道が流れている。

©JMPA

「FWでプレーできないという葛藤はあった。でも、やっぱり、このままじゃ終われない。サイドで出るなら、いっそ試合に出ないほうがいいとも考えた。監督には何度も、『FWでやりたい』と話している。監督もわかってくれてはいたんだけど、『今は1トップでうまく行っている。でも(サコを)試合に使いたいから』と言われていた」

ADVERTISEMENT

監督に対して自己主張するのは当然の権利

 たとえ、どんなポジションでも試合出場機会は貴重だ。しかし、大迫は黙ってそれを受け入れているわけではなかった。日本でなら、指揮官の判断に異を唱えるのはご法度かもしれない。しかし、欧州では、監督に対して自己主張するのは選手にとって、当然の権利だ。何も言わなければ、「大迫はサイドでの起用に満足している」と思われるだけだ。

セネガル・カリドゥ選手と競り合う大迫 ©JMPA

 そのシーズンは25試合に出場したものの1ゴールで終わっている、確かに不本意なシーズンではあったが、監督と大迫とは強い信頼関係で結ばれた。

「絶対にいいことが来ると思い、我慢していた」とそのシーズンについて振り返り、大迫は語った。

「ただただ、このブンデスリーガで本当に活躍したい、結果を出したいということしか考えていなかった。ケルンでできなかったら、もう終わりだなって思っていた。だから自分を追いつめて、追いつめて、追い込んだ。同時にやれる自信もあったから。いい感じに流れを持っていけば、絶対に行ける」