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柴崎岳と大迫勇也 “寡黙なふたり”はなぜチームの中心になれたのか

柴崎岳と大迫勇也 “寡黙なふたり”はなぜチームの中心になれたのか

2018/06/27
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“7ゴール6アシスト”を記録した2016-17シーズン

 そして迎えた16-17シーズンは、大迫にとってもケルンにとっても非常に有意義なものとなった。2トップの一角に立つ大迫は、そのポジショニングと動き出しで、味方のパスを数多く引き出した。ディフェンダーの選手はボールを奪うと、すぐに大迫を探す。そしてパスを受けた大迫が前線で身体を張り、攻撃チャンスを演出する。

 2016年10月、アウェイで王者バイエルン・ミュンヘンと引き分けた試合では、ドイツ代表のディフェンダーを背負いながら、前線でボールを保持するシーンは圧巻だった。

 当時は代表招集されない時期だったが、「今はリーグに集中できているから楽しい」と話した。代表活動期間は、リーグ戦がないため、数日間のオフがあり、それを利用して家族旅行へ出かけて、リフレッシュできると笑った。

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 そのシーズン、大迫は7ゴール6アシストと活躍し、チームにヨーロッパリーグ出場権をもたらした。

大迫選手を応援するサポーター ©JMPA

ドイツへ来たらサッカーしかないから

 大迫もまた鹿島時代は寡黙なストライカーだった。

 自身の特性を理解し、活かしてくれる指揮官とチームメイトに恵まれた。だから、淡々と自身の仕事にまい進するだけで、十分だった。しかし、欧州ではそういうわけにはいかない。自身のプレーの良し悪しを判断し、どうすべきかを自分で決めていかねばならない。当然、鹿島でもその作業は同じだが、ドイツでは、アドバイスをしてくれる先輩もいなければ、励ましてくれるチームメイトも少ないだろう。欧州で戦う選手たちの多くは誰もが自分のことを一番に考えている。だからこそより孤独な戦いとなる。

「鹿島でもそうだったけど、僕はもともと時間がかかるタイプだから。最初は時間がかかる。でも、頑張るしかない。ここ(ドイツ)へ来たらサッカーしかないから。試合に出られないから移籍します、結果出ないから移籍しますじゃ話にならないから。やるしかない。ドイツでは日本みたいに助けてくれる人はいない。試合中も誰も助けてはくれない。だから、ひとりでがんばるしかない。でもそれが楽しさでもあるんですけどね」

 ケルンの練習場で大迫の覚悟を聞いた。

大迫選手 ©JMPA

海外移籍にも快く送り出す、「鹿島」という環境

 欧州に出て変わる。

 鹿島では、小笠原満男や中田浩二、内田など、数々の前例がある。だから、海外移籍のオファーがあり、選手が望めば、クラブは快く送り出す。

「せっかく育ってきたなと思ったら、出ていくからね」と鹿島の鈴木満強化部長はそう語りながらも、息子たちの成長に目を細め、「いつでも戻ってこいとオファーは出し続けているよ」と笑う。主力選手の移籍は、チームにとっては大きな打撃だ。しかし、また育てればいい。厳しさのなかで選手を育む。そんな鹿島の環境が、大迫や柴崎の土台を作った。

 だから、彼らは欧州の地で戦い、苦闘を糧に成長を続けられる。

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