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“ブラック教員”問題 私立学校でも未払い残業代を取り返せる

“ブラック教員”問題 私立学校でも未払い残業代を取り返せる

授業準備、教材研究、部活動……関西大学付属校では支払い合意へ

2018/07/02
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・昼休みの生徒指導、給食指導

 1日6時間を超える労働時間の場合は45分間以上、1日8時間を超える労働時間の場合は1時間の休憩を取得しなくてはならない。この休憩を、学校の昼休みにとったことにさせていながら、労働をさせているケースが非常に多い。

 昼食を取りながら授業準備や教材研究をしている場合、電話が来たら対応しなくてはならない場合、生徒が質問や相談などの用事で訪ねて来なければならない場合、これらは休憩が取れたことにならず、労働時間であるといえ、残業代を請求できる。

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 小学校・中学校教員の場合は、給食指導として生徒と給食を一緒に取る業務がある。これは明確に労働時間であり、残業代を請求できる。

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・テストの採点

 夜遅くまで学校に残って、テストの採点業務を行なっているにもかかわらず、残業代が払われていないケースも多い。これは明らかに労働時間であり、残業代を請求できる。

 情報漏洩を防ぐために持ち帰りが禁じられている学校がある一方で、持ち帰り残業として行なっている学校もあるようだ。持ち帰りの採点は、やはり労働時間を証明しづらくなってしまうので要注意だ。

・部活動

 部活動についても、顧問を引き受けることが義務付けられていたり、生徒が残って練習をしている時間には担当の教員が残って見送りが義務付けられていたり、活動を行う教室や施設の鍵の管理をしていたりということがあれば、労働時間であると主張しやすく、残業代を請求できる。休日の部活動の場合も同様だ。

 実際に部活をした時間と関係なく、少額の部活手当のみが払われているケースは多いが、時給に換算すれば最低賃金以下の最低賃金法違反にすらなってしまう場合がほとんどだ。

 高校野球などで、生徒が応援のために学校行事として遠征する場合の引率を教員が行う学校もあるが、これは明確に労働時間であるといえ、残業代を請求できる。

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 このように、私学教員の作業のほとんどに、残業代を請求できる可能性があるのである。なお、これらの残業代の請求には、労働時間の記録が不可欠である。公立学校もそうだが、私立学校でも労働時間の記録をつけていないケースが多い。学校が記録しない場合は、教員自身が、メモや日報のようなもので、残業時間と具体的な業務内容を証拠として残しておくことが必須であるので、ぜひ実践してみてほしい。

残業代請求は、私学教員の働き方改革の「近道」

 最後に、関西大学付属校で残業代請求のために声をあげた、現在裁判中の教員Aさんの言葉を紹介しよう。

「残業代を請求したことで、『今更何言っているんだ』という気持ちの経営者や教員もいるかもしれません。でも、残業代を支払わせることで、教員の長時間労働の現実が変わっていくんじゃないでしょうか。学校が教員をいくらでも働かせていいという現実は間違っていると思います」

 公立学校の働き方改革には、国の制度の見直しが不可欠だ。一方、私立学校では残業代を請求できる。これまで払っていなかった残業代を払うことになれば、長時間労働を是正する圧力になるはずだ。私学の働き方改革には、未払い残業代請求が「近道」なのである。

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