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大ベテラン議員に学ぶ、安倍首相の発言を「なかったこと」にする方法

source : 週刊文春 20108年7月5日

genre : ニュース, 政治

麻生政権で官房長官 ©共同通信社

 相次いで安倍晋三首相に都合の悪い発言がなかったことに――。6月7日には柴山昌彦自民党筆頭副幹事長が、財務省の森友公文書改ざんは「国会における総理の答弁が少なくともきっかけになったことは紛れもない事実」と発言し撤回。その矢先、衆院予算委員長の重職にある大ベテラン・河村建夫氏(75)も前言撤回に追い込まれた。

 6月20日夜、東京・銀座の高級ステーキ店「かわむら」。安倍首相お気に入りのレストランに集まったのは麻生太郎財務相、二階俊博幹事長ら錚々たる面々。本来なら国会最終日だったこの日、「首相が『予算委員会はお手柔らかにしてほしい』『集中審議は勘弁してほしい』と発言した」とメディアに紹介したのが河村氏だった。

 この首相発言が、延長国会で集中審議を求める野党をいたく刺激し、「とんでもない話だ」と反発が広がった。河村氏は翌21日の午後、「総理が言ったのは『お手柔らかに』という言葉だけで、勘弁してほしいと言ったのは別の人」と釈明した。

 自民党幹部は「河村さんだから許された」と苦笑する。初当選は1990年、福田派の重鎮だった田中龍夫氏の地盤を引き継ぎ、安倍派―三塚派に属した。93年、自民分裂後は政治改革慎重派の多い三塚派にあって「珍しく改革推進派。当時から選挙に強く、どんな制度でも生き残れる自信があったからだろう」(ベテラン秘書)。事実、今日まで連続当選を果たしている。

 98年、三塚派分裂で亀井静香氏と行動をともにし、江藤・亀井派に身を投じる。「人当たりが良く、皆を安心させる」(同前)人柄と選挙の強さで、派閥分裂後も前の仲間と変わらず付き合い続けてきた。ポストにも恵まれ文科相、官房長官、選対委員長などを歴任し、今や二階派の重鎮だ。

 しかも、同じ山口選出の安倍首相とは共通の利害がある。河村氏の地盤である衆院山口三区は、林芳正文科相が6年前に参院から鞍替えを狙った選挙区だ。河村氏は安倍首相と組んで阻止した。

「林義郎元蔵相の息子である林さんが首相を目指すには衆院への鞍替えが不可欠。林家―安倍家の長年のさや当てからいって、林さんの衆院転出を阻止した河村さんは安倍家の同志。河村さんは息子に継がせたいようで、安倍首相の支援は必須です」(党幹部)

 かくして、首相発言はいつものように「なかったこと」になったのだった。