文春オンライン

追悼・Hagex 「来週飲みに行く約束はどうなったんだよ」

「40代だけ給与減」について書いていたら飛び込んできた41歳の訃報

2018/06/28

Hagexの訃報を知って

 そんな陰鬱なテーマで明るく原稿を書いている最中に、稀代のネットウォッチャーHagexさん41歳が、九州大学中退後自宅警備員をされていた「低能先生」42歳に刺されて亡くなったようだ、という衝撃のニュースが入ってきました。30分ほど前でしょうか。うーんと、30分ほどいまパソコンの前で呆然として私は固まっております。お母さん、フリーズする不幸をお許しください。

 これから新しい仕事を始めるために世に出ようと活動を広げていたHagexさんが、頭脳も才能も恐らくあるけど世に受け入れられず自宅で悶々とはてな民を煽り続けてきた40代無職に殺されるとか、理不尽に社会の歪みを押し付けられたロスジェネ世代の40代が、ロスジェネ世代の40代を殺すとか、不幸すぎる。Hagexおい何で無断で死んでるねん。来週飲みに行く予定はどうなったんだよ。

 政府が悪いとか社会が悪いとか親世代が悪いとか能力がないのが悪いとか、誰かのせいにしてどうにかなる問題ではありません。私らの世代は、やはり人口の多かった団塊の世代による猛烈なベビーブームと、バブル景気が弾けて終わった夢のあとの反動による景気低迷という避けがたい日本社会の「裂け谷」で重い荷物を背負わされた、理不尽を受け入れて生きる世代なんですよ。上には年老いた親があり、下には腹をすかせた育ち盛りの子供がいる。社会からは結婚しろ子供を産め育めと求められ、稼ぎが少ないと罵倒され、親の介護をして一人前と押し付けられ、独り身は孤独死に怯えながらその後の人生を歩んでいかなければならない。キャリアを積んで稼げる能力を身に着けられる時期は景気が悪くてフリーター当たり前の時代を生き抜いても、より深い谷に落ち込んでいくのが宿命づけられていたわけですよ。

ADVERTISEMENT

©iStock.com

こんな酷い世の中があるかよ

 Hagexも運が悪かったな。痛かったろうに。死んでも死にきれなかろう。あんな便所で背中を刺されて死ぬような男ではなかった。ついてない。殺したやつもふざけんなだけど、生きて罪を償い魂の救済はされなければならない。頭の良い奴だったのだろう、環境や状況が整っていれば、肩を叩き合って飯食って酒飲んで未来を語り合っているような奴だったかもしれん。気の毒に過ぎる。殺されたHagexも、殺した低能先生もだ。こんな酷い世の中があるかよ。

 でもロスジェネ世代も他の日本人もこの社会で生きていく。どんなに理不尽で不愉快で納得のいかないことばかりの世界だとしてもだ。薄汚れた真っ暗な世の中で、ちょっとした光明を見つけて、笑って喜んで生きていかなければならない。馬鹿にしたりされたり、怒ったり嘆いたりしても、でも世の中は捨てたもんじゃない、次の世代に私たちよりも少しでもいい世の中を引き継げるよう精一杯生きて繋いでいくしかないわけだろ。