文春オンライン

追悼・Hagex 「来週飲みに行く約束はどうなったんだよ」

「40代だけ給与減」について書いていたら飛び込んできた41歳の訃報

2018/06/28
note

 内閣府がしょっぱい発表をしておりました。曰く、「正社員給与、40代だけ減少」。

 あははははは、私45さーい、ど真ん中40だーーい、あはははははははは。何だとこのやろー。

 正社員給与、40代だけ減少=昇進遅れが背景-5年前と比較:時事ドットコム
 https://www.jiji.com/jc/article?k=2018062501119

ADVERTISEMENT

©iStock.com

社会人デビューするところで躓いた世代

 もう知能を低下させて事態に対抗しないとやっていけないニュースなんですが、よく考えたら私は正社員ではありませんでした。むしろ、私が雇ってる40代諸君の給与を上げてやらないといけない身分であることに気づき、申し訳ない気分で一杯です。すまねえ、みんな、すまねえ。なんだろう、この40代をDISられると脊髄反射してしまう物書き中年の習性の悲しさ。原稿料アップを強く要求してまいりたいと思っております。

 で、この問題の構造は記事にもうっすら書いてあり、内閣府もそれっぽいことを書いていますが、要は日本企業が「失われた十年」でバブル後遺症をモロに受け低迷した90年代に就職活動をし、空前の就職氷河期で正社員どころかアルバイトの仕事ですらまともなものが見つけることができず、スキルを得て職を探そうにも身動きが取れないという、社会人デビューするところで躓いた世代であります。

 そして、何より同年代に人が多い。日本企業文化特有の「お前の代わりはいくらでもいる」としごかれるマネジメントのもと、企業戦士として会社に忠誠を尽くすことを求められる最後の世代と言いましょうか。同年代に日本人がたくさんいて、景気が悪くて正社員になれなかったため、給料の上がる管理職になることのできない40代がたくさん増えた結果、40代は5年前に比べて所得が低くなっている、という実に良く分かる、しかし理不尽で受け入れがたい内容であります。人がいっぱいいて超絶に激烈な競争社会で他人より頭一個出ることに血道上げて頑張った結果、40代で上手くいっている奴よりも大多数の敗残者が無職や非正規雇用に甘んじざるを得ない、っていう人間の尊厳を否定される日々を送ることになるわけですね。引きこもりの高齢化が問題視されましたが、その最先端であり、かつボリュームゾーンがいまの40代ということになりますでしょうか。

ロスジェネ世代はガッツリ40代になった

 私が卒業した96年は、ピカピカの奴らは都市銀行や製造業、広告代理店など当時の花形産業に就職していったのですが、これらの大企業は出世が大抵「年次で決まる」文化なので先の見える奴らほどさっさと銀行など大企業に見切りをつけ、ベンチャー企業を立ち上げたり留学してコンサルになったりと脱社畜になっていきました。なんせ、会社は人員削減でスリムになる、しかししなければならない仕事の総量は変わらないというリストラの時期は人件費を浮かすために猛烈に働かせられ、30代後半になってみると給料が一番上がるはずの管理職は少なくなった人員のお陰で減る一方……。そりゃあ給料なんて上がりませんって。会社にしがみつこうとするほど、会社はブラックでもこいつら辞めないのだな、ならこき使ってやろう、ってなるのは世の摂理であり、当たり前の企業行動だってことでありましょう。

©iStock.com

 世間では、私らの世代から2005年ごろまでの就職氷河期に社会に出た人間は「ロストジェネレーション世代」としばらくの間言われていましたが、いま2018年、ここらがガッツリ40代なわけです。あははははは、わたし45さーーーい。知能が低いので対抗できませーん。ここの人口ボリュームゾーンが給料低いクソ世代だ、お前らはニッポンのお荷物なんだぞバーカって内閣府に言われているのが現状です。辛い。

 何しろ給料が低いだけでなく将来に展望が見えないこともあり、結婚できない人の割合が増え始めたのもいまの40代、当然子供もできなくて日本の出生率減少の原因になってるのも40代、人ばっか多い年代のくせに本当に役に立たないな、お前らなんかにロスジェネとは呼ばせない、せいぜい「ホリエモン世代」ぐらいに自称しとけ馬鹿とレッテルはられ士気がダダ下がりなのです。