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「袴田事件」再審認めず 82歳の袴田氏は自分を「23歳」と認識

散歩中の袴田氏(6月12日) ©共同通信社

「袴田事件」で死刑が確定し、2014年の静岡地裁の再審開始決定で釈放された袴田巌氏(82)。東京高裁(大島隆明裁判長)が6月11日に地裁決定を取り消したことに対し、袴田氏の弁護団は18日、“逆転判断”を不服として特別抗告した。4年前に48年ぶりの「死刑囚の釈放」という異例の経過をたどった裁判の審理は、最高裁に移ることになった。

 1966年6月、静岡県清水市(当時)で、みそ製造会社の専務一家4人が殺害された。同社の従業員だった袴田氏が逮捕、起訴され、公判で一貫して無罪を主張したが、80年に最高裁で死刑が確定。袴田氏がその後行った第一次再審請求は認められず、続く第二次再審請求で静岡地裁が再審開始を認めた。それに対し静岡地検は東京高裁に即時抗告していた。

 司法記者が解説する。

「東京高裁では、静岡地裁が再審開始決定の最大の根拠としたDNA型鑑定の信用性が争われました。高裁は、この鑑定が研究者の間で十分に認められた手法ではなく、再検証する必要が生じた場合の鑑定データも残っていないとして信用できないと結論付け、地裁判断を覆したのです」

 高裁は袴田氏の再審開始は認めない一方で、地裁が出した「死刑と拘置の執行停止」(釈放)は維持した。これにより、拘置権限のある検察は再収監を見送り、袴田氏は「死刑囚」でありながら囚われていないという異例の状態が続くことになった。高裁は高齢であることなどに配慮して釈放を維持したものの、今後、再審「不開始」が確定した場合は釈放を維持できないとの見解も示した。

 袴田氏の現状は「日々外出してよく歩いており、元気な様子です。ただ、『自分はローマ法王だ』と言い、自分の年齢を『23歳』と認識しており、精神的には半世紀もの収容による拘禁症状とみられる影響が窺えます」(同前)という。

 最高裁は一般に法律審といわれ、原則として、憲法違反や判例違反がない限り、高裁判断を支持することが多い。ある法曹関係者は「最近の傾向だと、最高裁は2年前後で結論を出すのではないか」とみる。

 仮に最高裁が高裁判断を支持した場合、袴田氏の再収監が現実味を帯びる。