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野球場ではたらくビールの売り子さんのホンネ〜糸井さん、入江さん、死亡遊戯さんのプロ野球談義

糸井重里(ほぼ日)×入江眞子(元ビールの売り子さん)×中溝康隆(プロ野球死亡遊戯)スペシャル座談会【後編】

「野球が好き」というより「時給がいい」

中溝 1杯につきいくら、というインセンティブがつくんですか。

入江 インセンティブは1杯につき30円です。で、何杯超えるとボーナス、さらに何杯超えると、というふうに。あとは基本給が時給で出ます。普通の大学生のバイトより全然稼げます。売り上げが悪い日でも、4時間働いてだいたい1万円稼げるので。

糸井 そうか、時間も短いもんね。

入江 はい。元々は大学の先輩の紹介で入ったんです。時給がいいよ、と教えて下さって。だから野球が好きで、というわけではなかったです(笑)。

中溝 1994年生まれだから、大谷翔平世代ですもんね。

入江 そうです。

中溝 自分が79年生まれで阿部慎之助世代。これだけのギャップがあると、野球に対するとらえ方が違いますよね。地上波で巨人戦を見ていない世代だよね。

入江 あまり記憶に残っていないですね。

売れる売り子「3つの条件」とは

中溝 巨人ファンは勝ちに貪欲ですよね。だから自分も、勝ち負けはどうでもいいから育成をやれ、とかは絶対に書かないようにしてます。他チームのファンは、負けてもこの選手がいるから楽しいとかあるんですけど。

©文藝春秋

糸井 自分の代わりに野球をしてもらっているので、あれは僕なんですよ。だから中日が落合博満監督だった時代に「お前たちのやることは見え見えだよ」みたいな作戦を取られ、本当にそういう負け方をしたときに、自分がナメられた気がした。

中溝 なぜ負けてこんなに腹が立つかと言うと、たぶん自分が負けたからなんでしょうね。ビールは勝っているときと負けているときと、どっちが売れるんですか。

入江 勝っているときですね。さっきお話を聞いて思い出したんですけど、巨人ファンの方は負けてると本当に買ってくれなくなります。こちらとしては神宮で働いていても「頑張って、巨人」という感じでした(笑)。巨人の誰かがホームランを打つと待機して、盛り上がりが落ち着いたときに、何杯でも出せるようにパッと行って。

糸井 やっぱり相当考えてるね。

入江 メチャクチャ考えて動いていました。売り子の売れる条件として、まずは容姿、それに技術、根性だと思うんです。やっぱりトップの方って3つとも揃っている。自分は目立つ容姿ではなかったので、とりあえず技術と根性で勝負しようと。

中溝 野球選手みたいですね。自分は何で勝負出来るかを考える。嫌な客とか、からんでくるおじさんもいるでしょう。

入江 さわってくるお客さんには、やめてくださいよ〜と笑いながら言ったり。ビールを今は買わないのに、次は買うから連絡先を交換しようとか言うお客さんもいて。

中溝 始めたばかりの子だと嫌になってしまうかもしれない?

入江 そうですね。やめる子は本当に多くて。私も同期が30人くらい一緒に入ったんですが、シーズンが終わる頃には3分の1以下になってました。

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