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娘が老いた父と良い関係を保つ秘訣は「距離感を詰めないこと」

著者は語る 『生きるとか死ぬとか父親とか』(ジェーン・スー 著)

『生きるとか死ぬとか父親とか』(ジェーン・スー 著)

 母が他界してから20年、父とひとり娘は限界集落ならぬ“限界家族”として踏ん張ってきた。

 作詞家、コラムニスト、ラジオパーソナリティとして活躍するジェーン・スーさんが最新刊で向き合ったテーマは「父親」だ。

「母を亡くしてから、自分が“母親”としての彼女しか知らないことに悔いを抱えてきました。母には妻として女としての顔もあったはず。父も80歳近くなり、いつかは死が訪れます。そのとき母を亡くしたときと同じ後悔を繰り返したくなかった。そんなことを考えていたら、新しい家に引っ越したいが金がないと父が頼ってきたので、援助する代わりに『君のプライベートを書くよ』と持ちかけました。父も快諾し、ディールが成立したんです」

 事業が傾き株で失敗して4億をコカし、文京区小石川に建てた4階建ての社屋兼住居を手放した父。常にちらつく女性の影を妻子に隠そうともしない豪快な男だったが、今では別人のように穏やかだという。

「70代に入ってからは物覚えが極端に悪くなったり、体力が低下したり。やっぱり怒るにも威張るにも体力が必要ですよね。性格が変わって丸くなったというより、加齢によるエネルギー不足というのが正しいと思います」

 一時は絶縁寸前だった父娘だが、今は「凪の状態が来ている」とのこと。良好な関係の秘訣は「距離間を詰めないこと」と語る。

「一緒に暮らしたら、きっとまた仲が悪くなるし、険悪なムードが流れると思います。近くにいて密度を高めていく関係になると、相手に対する期待値がどうしても高くなり、裏切られる確率も上がるので。お互いに期待しないくらいの近さが心地いいですね」

1973年東京生まれ。作詞家、コラムニスト、ラジオパーソナリティ。TBSラジオ「ジェーン・スー 生活は踊る」のMCをつとめる。著書に『私たちがプロポーズされないのには、101の理由があってだな』『女の甲冑、着たり脱いだり毎日が戦なり。』など。

『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』等の過去作では、同年代の女性が抱く屈託を冷静かつユーモアたっぷりに分析してきた。切れ味鋭いコラムの読後感が病みつきになる女性読者が続出。ジェーンさんにとって執筆は「棚卸し&お焚き上げという意味合いが強い」そうだ。

「父に対しては愛憎半ばする感情があり、父親らしからぬ態度や振る舞いに苛立っていました。振り返ると父は『親不孝な娘だ』と私を詰(なじ)ったことはなく、個人として私を尊重してくれているのに。本書の執筆を通して“理想的な父親”への執着から離れ、父娘の関係はテンプレ通りにいかないのだと改めて納得できて、すっきりしました」

『生きるとか死ぬとか父親とか』
20年前に母が他界し、残された父とひとり娘のジェーンさんは“限界家族”となった。いちばん近い存在のはずの父と分かり合えず、その言動に傷つく日々。一時は絶縁寸前までいった父娘関係は雪解けを迎え、今は凪の状態だ。いつか父が逝ったときに後悔しないように、等身大の姿を書き留めた渾身のエッセイ。

生きるとか死ぬとか父親とか

ジェーン・スー(著)

新潮社
2018年5月18日 発売

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