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“エムバペ世代”の中日・石垣雅海に胸騒ぎが止まらない

文春野球コラム ペナントレース2018

2018/07/20
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吉田正尚ばりのフルスイングが魅力・石垣雅海

 山形県酒田市出身の石垣は酒田南高で1年の春からレギュラーだった。ソフトバンクの柳田悠岐やオリックスの吉田正尚を彷彿させるフルスイングは、当時から広く知られていたという。

 野球界ではここ数年、ゴロやライナーよりもフライを打ち上げた方が安打となる確率が高いという「フライボール革命」が起こっている。テクノロジーの進化により打球の速度やスピン量などが正確に計測できるようになり、科学的分析に基づいたものだ。詳しい説明は省くが、理想の打球角度を30度前後とし、そのためにはボールの中心線よりやや下、時計の文字盤に見立てれば7時の位置を打つことが求められる。

 かつてご法度とされたアッパースイングが隆盛となりつつあるのには、このような背景もある。石垣は高校時代から、新時代プロ野球の理想型スイングに取り組んでいたことになる。

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 石垣に魅力を感じるのは、スイングだけではない。1998年生まれであることも、妙に胸が騒ぐのだ。

98年生まれは「黄金世代」

 98年4月~99年3月生まれの世代は、スポーツ界では「ゴールデンエイジ(黄金世代)」と呼ばれ、今年2月の平昌冬季五輪で2大会連続銀メダルの平野歩夢、米ツアー挑戦2年目の今年に早くも初勝利を挙げた世界ランク12位の畑岡奈紗、陸上短距離のサニブラウン・ハキームら逸材があふれている。付け加えれば将来の大女優と私が思い込んでいる広瀬すず様も……である。

 なぜか? 根拠はないが、98年は日本のスポーツ界にとって特筆すべき年だったことは確かだ。長野で冬季五輪が開催され、サッカーW杯に日本が初出場し、当時横浜高の松坂大輔は夏の甲子園の決勝戦でノーヒットノーランを達成した。その年に生まれたアスリートは、きっと何か持っている。そう思わずにいられない。

 ドラゴンズは今年6月17日の西武戦で、やはり98年生まれの藤島健人投手がプロ初先発初勝利を挙げた。そう、先発予定だった松坂が直前に背中のけいれんで登板回避した試合だ。やはり何か持っている。

 そんなことをパリのカフェでビール片手に思い、ニヤついていたら、とんでもない黄金世代がもう一人いることに気づいた。W杯フランス代表で19歳にしてエースナンバー「10」を着け、優勝に導く大活躍を演じたエムバペだ。日本だけではなかった。これからは98年生まれの世代をもっと大きなスケールで、エムバペ世代と呼ぶことにしよう。

 そういえばフランスのW杯優勝も自国開催の98年以来だった。さらにいえば、フランス代表を応援する時の合言葉は「アレ・レ・ブルー」である。「アレ」は「行け」、そして「ブルー」は青をチームカラーとする代表チームの代名詞だ。

 ブルー…ブルー…ドラゴンズと同じではないか。胸騒ぎはもう止まらない。エムバペ世代の石垣よ、焦らずじっくりとフルスイングに磨きをかけて1軍に上がってきてくれ。でも今のドラゴンズは君のような大きな星を持った若手を必要としている。だから少しだけ急いでほしい。こんな願いを胸に、パリの青空を見上げて祈った。アレ・レ・ドラゴンズブルー!

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