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そこは三嶋一輝を旅するふしぎなエレベーター

文春野球コラム ペナントレース2018

2018/07/21

 三嶋エレベーター。

 そこは三嶋を旅するふしぎなエレベーター。

 三嶋ってなんだろう。その答えはここにある。そう聞いて乗り込んだ、このエレベーターに。

 三嶋一輝28歳。2012年のドラフト2位。法政大学出身。ファン誰しもがハートを奪われた男。ファン誰しもがエースになることを夢みた男。どこにいるんだろうあの日の三嶋は。三嶋ってなんだろう。その答えはここにある。私は「13」のボタンを押した。

「チン」という音を立て、「ガタン」とひとつ揺れてエレベーターは止まった。扉がゆっくりと開く。まばゆいカクテルライトに照らされて、マウンドに三嶋は立っていた。1塁側からの、地鳴りのような歓声とたたむことを忘れられた傘。静まり返る3塁側の観客の、そのブルーのユニフォームよりもっと青ざめた表情で、三嶋はマウンドに立ちつくしていた。1回裏、スコアボードに刻まれた「7」という数字。私はハッとして、慌ててエレベーターに引き返した。違う、ここは「13」じゃない。表示板を見上げると「14」が点滅していた。

見なくても分かる。ここは「15」だ

 そこは三嶋を旅するふしぎなエレベーター。

 もう一度「13」を押した。またエレベーターは動き出した。上がっているのか、下がっているのか。「チン」という音と、ガタンという揺れで、またエレベーターは止まった。

 扉が開くと、そこは見渡す限り赤いスタジアムだった。「14」の三嶋とは別人のような、厳しく気合のこもった目で打者を一瞥する三嶋がそこにいた。殺気すら漂っていた。どんなすごいパワーヒッターを迎えているのかとバッターボックスに目をやると、被り慣れないヘルメットで、これまたただならぬ気配をみなぎらせた9番打者がそこにいた。私怨なのか、はたまた遺恨なのか。次の回も投げるというのに、粘りに粘る9番打者。ついに魂のストレートで空振り三振に打ち取ると、まだ試合序盤だというのに、ランナー背負った場面でもないのに、相手ピッチャーなのに、三嶋はマウンドで渾身のガッツポーズを決めた。ここも「13」ではないことは、割と早くに分かっていたけど、面白いからひとしきり眺めていた。見なくても分かる。ここは「15」だ。

2012年ドラフト2位でベイスターズに入団した三嶋一輝 ©時事通信社