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ライオンズ打線を支える2人の強打者 山川穂高と森友哉の素敵な関係

文春野球コラム ペナントレース2018

2018/07/25

 開幕時から続いている、毎日の光景である。メットライフドームでナイトゲームが行われる日の12時30分を少し回った頃、チームの先陣を切って、2人のぽっちゃり君がグラウンドに姿を現わす。今季の西武打線でクリーンナップを担う、山川穂高選手と森友哉選手だ。談笑しながらも、体操をし、流す程度の力で外野間を6本走ってウォーミングアップした後、互いにトスを上げてティー打撃というルーティーンを一緒にこなす。2014年入団の5年目同期。「一緒にいて当たり前」と、共に認め合う仲良しコンビにとって、このチーム練習が始まる前のひと時は、かけがえのない大事な時間になっている。

ウォーミングアップ中の山川と森

チーム練習前のひと時の重要性

 始まりは山川選手だった。自主トレ時にウォーミングアップの一環として行っていた体操、PC走(外野ポールからセンターまでの距離)を、シーズン中も延長して継続している。「あくまで自分のため」というだけあって、そこにはしっかりとした意図が存在する。

 このご時世、トレーニング法、理論など、様々な考え方がある中で、ランニングについても是非は人それぞれだ。西武の新4番は「走って損はない」が信念だ。正直、走るのは大の苦手である。証拠に、ルーキー時の新人合同自主トレでのランニングメニューでは、森選手と2人、列の最終で顔を上げながら走りきるのに必死だった姿が、今でもはっきりと記憶に残っている。その、できることなら避けて通りたいメニューを、あえて習慣として取り入れているのは、ただただ「下手になりたくない」との思いからだ。「僕は練習しないと下手くそになると思っています。全力で練習して、やっと今の状態をキープできる。で、それを続けていけば、ちょっとずつ上手くなれる」と信じてやまない。

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 試合前練習のフリー打撃では、全球フルスイングがモットー。さらに試合後、隣接する室内練習場にひとり打ちに行くという昨季後半からの慣習も、こうした危機感からに他ならない。「いつか年齢を重ねて、身体が追いついていけなくなった時に、スイングスピードが落ちて、いきなり打てなくなるのが怖いんです。だから、もしかしたら軽く6本走ってるぐらいでは何の意味もないのかもしれないですが、僕としては、歳をとってからも体力的に落ちないようにという意味でやっています」。

視野を広げるため欠かせない山川の存在

 それに感化されたのが、森選手だった。自主トレは、2人で「一緒にやろう」と話して行ったが、シーズン中のウォーミングアップに関しては一切約束はなし。それでも、22歳捕手は同期先輩の意志あるルーティーンに、ここまで倣い続けてきた。「正直、自分だけやったら、あんなに朝早く来て、あんな走ってなんてやれないと思う。でも、同期で、ずっと2人で『頑張ろう』と言ってやってきた先輩が一緒にいてくれるというのは、すごい心強いです。しんどくて、『もう今日はええわー』と思う時もあるんですけど、山川さんがおるんで、『やらんと』という気持ちになります」。遠征の移動時もしょっちゅう一緒に行っているという公私にわたる5年来の関係だが、2人の間で交わされるのは、ほぼほぼ「野球の話しかしたことがないぐらい。それが楽しい」と両選手は頷く。

 特に、森選手は「めっちゃ良い時間」だと位置付ける。というのも、自身にとって、山川選手は「プロに入った時からずっと一緒にやっているので、自分を一番長く見てくれている」唯一無二とも言える存在。毎日試合があり、毎日悩みが生じる中で、リラックスしているこの約1時間の間に「どうやったら打てるんですかね〜」「昨日のあの場面、山川さんだったら、(球種)何待ちます?」など、打者として、また、捕手からの視点も含め、様々な雑談を繰り広げることで、数え切れないほどのヒントを得てこれたからだ。

「僕はどちらかといったら感覚派で、山川さんはいろんなことを試してやってきたタイプで理論派。自分とは全くタイプが違うんですよ。だから、調子が悪い時にどうしたらいいとかの意見が全然違うんです。自分は感覚を口で言えないんですけど、山川さんはちゃんと説明できる。それを聞いて、『なるほど! そういう考え方もあんねや』と答えに繋がることがあるんです」。視野を広げるためにも、欠かせぬ存在となっている。

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