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29歳の正念場 小林誠司は巨人の正捕手に返り咲けるのか

文春野球コラム ペナントレース2018

2018/07/27

 小林誠司が正念場に立っている。5年目の今季は4月こそリーグ打率トップに立つなど好調なスタートを見せたが、夏場を前に下降線をたどり、6月29日の中日戦以来21試合連続でスタメン落ち(7月26日現在)。ルーキーの大城や後輩の宇佐見の台頭を受け、レギュラーポジションを失いつつある印象だ。順調な成長曲線を描いてきたプロ入り後、一番のピンチと言ってもいいかもしれない。ただ、小林にはまだまだ逆襲のチャンスがあるとみる。それは小林が守備力の面で、アドバンテージを持っているからだ。

 肩、フットワーク、リード、体の強さ、コミュニケーション能力、リーダーシップ。プロの捕手に求められるレベルはとんでもなく高い。プロのキャッチャーになることは難しいが、プロのキャッチャーであり続けることはもっと難しい。特に肩や足は先天的な要素が強く、スローイングやフットワークがプロの水準に達していないとみられたら、すぐにコンバートの構想が持ち上がってしまうのだ。

ベンチから試合を見つめる小林誠司 ©時事通信社

プロが求める捕手の水準の高さ

「プロのキャッチャーは本当にすごいんすよ。武山(真吾)さんとか(斎藤)俊雄さんの身体能力半端ないっすから」

 今はライターとして文春野球にも参戦している高森勇旗さんが現役時代、打力を生かすために捕手から内野手への転向が噂されていたころに語っていたことだ。武山、斎藤ともに1軍と2軍を行ったり来たりという選手だったが、それでもその身体能力は高森さんの度肝を抜くものだったという(武山は今でも中日で現役を続けているし、斎藤もロッテ、オリックスと渡り歩き、10年以上の現役生活を送っただけに、2人ともプロが求める捕手の水準を持っていた、ということだろう)。

 和田一浩、小笠原道大、山崎武司、衣笠祥雄……打力を生かすために捕手から野手にコンバートされた例は枚挙にいとまがない。それだけ彼らの打撃能力が高かったということでもあるが、裏を返せば「捕手としては見切りをつけられた」ということでもある。「打てる捕手」と「打てる一塁手」「打てる外野手」なら圧倒的に前者の希少価値が高いから、チームとしては高いレベルで捕手ができるなら捕手をやってほしいはずなのだ。それだけ「(水準を満たした)捕手」で「打てる」ということの価値はとてつもなく高い。その意味でも阿部慎之助や古田敦也、城島健司の偉大さは特筆すべきものだとも言える。

 その点、小林の守備面での能力は疑いがない。2年連続盗塁阻止率セ・リーグ1位は01~02年の谷繁元信以来の記録だし、昨季の捕逸2は100試合以上出場した12球団の捕手の中で最も少ない数字だ。自身も捕手としてダイヤモンドグラブ賞を6回獲得し、バッテリーコーチとして谷繁を育てた大矢明彦氏も「キャッチャーはまず球をしっかり捕る、止める、盗塁を刺す。リードがどうのっていうのはその後の話なんだ」と良く言っていた。その意味で、球界トップクラスのスローイング能力と捕球技術を持つ小林は第一関門をクリアしていると言える。