昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

オリックスの非公認マスコット「ゴーヤ」さんがいた、あの夏の記憶

文春野球コラム ペナントレース2018

2018/08/02

♪夏が来ーれば思い出すー。

 ……尾瀬でも、遠い空でもありません。
夏野菜のゴーヤ。
伝説の、いや、掟破りのキャラクター「1・2・3・4ゴーヤ」さん。

 数年前、バファローズのスタジアムには「けったいな生き物」(←関西弁。奇妙な、の意)がおりまして。

ゴーヤさん ©堀江良信

 ダミ声で喋るわ、グラウンドでハーレーのバイクを乗り回すわ、バク転なんてお手の物というレベルの身体能力。
野菜にしておくのはもったいないゴーヤさん。

 もとは沖縄・久米島のイーグルス春季キャンプで、FC琉球・沖縄プロレス・かりゆし58から連名で贈られたのが、翌年のオープン戦で神戸の球場へ応援に出向いた際、なぜかそこに現れたゾウに轢かれて?! 当時、バファローズのメンバーだった坂口選手と赤田選手に助け出され、その恩返しとしてオリックスに寝返ったという、ファンタジーのようなエピソードの持ち主です。

アドリブとは別次元のエンターテインメント

「ゴーヤさんの愛車。マスコットがハーレーを運転してグラウンドで駆け抜けるという光景が繰り広げられました」 ©堀江良信

“関西弁で喋るキャラクター”には、さすがに最初は面食らいましたが、間合いやジェスチャーなどから感情を読み解くのではなく、ダイレクトにコミュニケーションが取れる利点もありました。
何せ、丁々発止は得意でしたし、相手に毒づいても和ませる当意即妙さ。エスプリって、こういうこと?と思わずこちらが勘違いしてしまいそうなほどの圧倒的なトーク術を有した、おそるべき〝夏野菜〟。その行動は、とにかくやりたい放題でしたね(笑)。

 例えば……

試合の日にドームに行くと、アナブースのテーブルにCDが1枚置いてある。

私が座る位置にわざわざ置いてあるということは、私に関係がある音源=「あぁ、ゴーヤさんだな」と思う。

オペレーターさん(試合中、隣りで選手の登場曲などをタイミングよく出してくれる人)に「これ、多分“スタンバイしとけー”という意味だと思うー」と言って渡す。

試合前、お決まりのタイミングで登場したゴーヤさんは、ひとしきり喋ったあと「それではお聴き下さい!」と言って勝手に曲紹介を始める。

やはり! と、スタンバイしていたオペレーターさんがCDを再生し、歌い終わったゴーヤさんは演歌歌手のように会場の四方にお辞儀をして帰っていく。

 ……なんていうことが日常茶飯事でした。

 当時、よく「あのコーナー、台本ないですよね?」と質問されることが多かったのですが、筋書きのない、いや、段取りさえわからないまま私たちが必死についていくという感じ。アドリブとは別次元のエンターテインメントがそこにはありました。

 また、ある時は好調のライオンズを迎えた試合の前に、グラウンド上で「今からライオンズに文句言うてきますわー」とゴーヤさんが息巻いて「ライオンズさん! ライオンズさーん!!」と言いながら、こともあろうに試合前のライオンズベンチに消えていく!! という前代未聞の暴挙に出たこともありました。

 さすがの私もあり得ない事態に驚き、「ゴーヤさん! ゴーヤさーん!! ……あ、消えてもうた」しか言えず、ジ・エンド。