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酒井高徳が語るW杯の内側「今の日本代表の雰囲気は、2010年に似ている」

酒井高徳が語るW杯の内側「今の日本代表の雰囲気は、2010年に似ている」

2018/07/01
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 初めてのワールドカップ出場試合を酒井高徳は、ゆっくりと重たい口調で振り返った。

「まあ、うまくいかないことばっかりでしたね、やっぱり。自分が想像していた以上に難しかったというのが正直な感想です。必要とされるところでしっかりできるという準備を、100%するというのが、自分の選手としての生きる道というか、自分が今まで貫いてきたことだったけど。それでも、危なかったですけれど、僕らが出場したことで、力を貯められた選手たちが、次のステージへ万全な状態で行ける道を、少なからず作れたのはよかったです」

過去に経験したことないポジションでプレー

 6月28日グループリーグ3戦目のポーランド戦、日本代表は先発6人を入れ替えるという「奇策」に出た。大会2カ月前に監督が代わった日本代表は、そもそもが急造チームだ。ここまで1勝1分と良い流れに乗っているとはいえ、だからこそ、メンバーの入れ替えは大きなリスクを伴うものだった。特に、右サイドハーフという過去に経験したことのないポジションで起用された酒井高徳にとっては、非常に難しい試合となった。

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 ドイツ・ブンデスリーガのハンブルガーSVでキャプテンを務める酒井高徳の本職は、左右のサイドバック。ボランチを務めることもあるが、守備が彼の主戦場だ。10代から年代別代表として活躍してきたのも、ドイツ人の母を持つことのよる日本人離れしたフィジカルの強さと、チームのバランスをとるプレーが評価されてのことだった。

ポーランド戦でW杯初出場を果たした酒井高徳 ©JMPA

西野監督の言葉に「びっくりする時間もなかった」

 今大会で右サイドハーフを務める原口元気や左サイドハーフの乾貴士のようなテクニシャンタイプの選手では決してない。

 それでも西野朗監督は「サイドハーフで使っても大丈夫だと俺は確信している」と言い、酒井高徳を送り出した。起用を告げられたのが2日前。「びっくりする時間もなかった」という酒井高徳は、それでも懸命にその任務をまっとうしようと準備した。

「『高徳ならやれる』と言ってくれた監督の期待に応えたかった。実際自分がサイドハーフで出場する、しかもワールドカップでというところは、イメージがしづらかった。それでも守備面では負けられない。サイドバックの(酒井)宏樹の負担を少しでも軽減できるようにしたいとも考えていました。大崩れすることはなかったけれど、僕がマークしていた相手に得点を許したシーンは悔やまれる」