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W杯出場0分のリオ五輪世代「僕らは誰ひとり、満足はしていない」

W杯出場0分のリオ五輪世代「僕らは誰ひとり、満足はしていない」

2018/07/02
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中村、遠藤、大島……それぞれの「難しい立場」

 中村は、川島永嗣、東口順昭に次ぐ第3GKだ。GKはひとつしかポジションがなく、レギュラーが決まると大会中の交代は非常にまれだ。今回も川島が1、2戦で不安定なプレーを見せたが、ターンオーバーを敷いたポーランド戦でも西野監督は代えなかった。交代がもっとも困難なポジションで、3番手のGKがピッチに立った記録は、日本が過去5大会出場したW杯の歴史の中に一度もない。

柏レイソル所属のGK中村航輔 ©JMPA

 遠藤はユーティリティーなディフェンダーだ。右サイドバックの酒井宏樹の控えだが、2番手には左右のサイドバックをこなせる酒井高徳がおり、序列は一番最後になる。中盤の底であるアンカーのポジションやボランチでのプレーも可能だが、ボランチには長谷部誠、柴崎岳、山口、大島がおり、現実的にはこのポジションでの出場は考えにくい。

湘南ベルマーレ所属のDF遠藤航 ©JMPA

 大島は、現在はボランチの4番手だが、大会前までは今回活躍している柴崎とレギュラーの椅子を争っていた。非常に技術が高く、戦術眼に優れた攻撃的なボランチで、日本の司令塔になり得る存在だった。ところが大会前のスイス戦で腰を痛め、コロンビア戦までの間、ほとんど練習に参加できなかった。そこで出遅れてしまい、ポジションを失ってしまった。「ほんと、もったいなかった」と大島は述べたが、W杯で活躍するには実力はもちろん、運も味方につけないと難しい。

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柴崎岳と話す川崎フロンターレ所属のMF大島僚太 ©JMPA

ロンドン五輪世代」は4年前に屈辱を味わった

 リオ五輪世代が蚊帳の外に置かれたようにピッチに立てない状況を見ていると、4年前のブラジルW杯を思い出してしまった。

 当時、ロンドン五輪世代が8人も代表に入って一大勢力と化し、活躍が期待された。しかし、いざ大会が始まると常時出場できたのは大迫勇也と山口蛍だけ。今大会で活躍している酒井宏樹はピッチに立てず、大迫も出場したがまったくの不発に終わった。

 敗退が決まった後、ロンドン五輪世代だけのメンバーで練習グラウンドに集まり、「次のW杯は自分たちが中心で」と誓い合い、その屈辱を胸に解散した。その時のメンバーの酒井宏、大迫は今大会で活躍し、宇佐美貴史、原口元気らブラジル大会でメンバーに入っていなかったロンドン五輪世代の選手も代表に入り、プレーしている。

 あの時、誓った約束を酒井宏ら数名の選手たちは、しっかりと守ったのだ。