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「議長の横暴や!」 佐川急便の“未払い残業代”を株主総会で直撃してみた

2018/07/10

「ちょっと待って。議長の横暴や! やめてまえ、そんな猿芝居。佐川なんて潰れたらいいねん。こんなのが社長やっとるなんて、最悪や」

 6月28日、こんな怒号が飛んだのは、佐川急便を傘下に持つSGホールディングスの株主総会だ。同社が昨年12月に、東証一部に上場してから初めての株主総会が、京都市内のホテルで開かれた。冒頭の怒りの声が上がったのは、私の質問を議長である町田公志社長が早々に切り上げ、強引に採決に入ろうとした時のことだった。

栗和田会長は創業者・佐川清氏の息子 ©共同通信社

 私が『仁義なき宅配』(小学館、2015年刊)で宅配業界について書いた時、最も苦労した取材先が佐川だった。同社のトップである栗和田榮一会長が記者会見に応じたのは、ここ数年で一度だけ。私が、本誌で書いた佐川の残業代未払いを新聞、テレビが報じた際も、その総額の公表には応じなかった。私は、宅配業界1位のヤマト運輸の労務管理や情報公開への姿勢を批判してきたが、佐川の閉鎖的な体質はヤマトをはるかに上回る。

 ただ、今や佐川は、一部上場企業の中核事業である。そこで、私は株主となり、公開の場である株主総会で情報公開を求めることにしたのだ。

 私が質問できたのは5番目だった。尋ねたのは2問。そのうちの一つが、佐川が前期にドライバーに支払った未払い残業代についてだった。

 佐川の支払い方には二つの問題点があった。一つは、支払いを過去1年に限ったこと。労働基準法で認められた請求年数は2年で、違法の疑いが残る。もう一つは、総額を公表していないこと。既にヤマトは200億円以上に上ると公表しているが、上場企業にとって、その金額が10億円なのか、100億円なのかでは、投資判断にも大きな影響を与える。

 町田社長はこう答えた。

「出退勤の管理を厳密にしていく。過去のエビデンス(証拠)を元に不都合があった場合には対処していく。また、(未払い残業代は)金銭をもって精算したということは事実だが、それに基づいての前期の業績ということでご理解いただきたい」

 株式を広く公開する上場とは、社会の公器になること。だが、SGホールディングスが、その意味を理解しているとは思えない株主総会だった。