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W杯敗退 新聞おじさんの「うっとり系」記事で忘れられていること

W杯敗退 新聞おじさんの「うっとり系」記事で忘れられていること

眠い目をこすりながら、1面コラムが言うことには

2018/07/06
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「赤い悪魔 交代策当たる」(朝日新聞夕刊 7月3日)

 この見出し、よく見るとシュールだが多くの人には説明不要でわかる一節となった。

 W杯、ベルギー戦。2点差を逆転されたあの試合。

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 新聞の顔ともいえる各紙の一面コラムは、戦いすんで朝が来てうっとりしていた。

©JMPA

いいネタに気づいたからって、何を言ってる読売新聞

 まず朝日新聞「天声人語」。

《評価のされ方が大仰ではあるものの、今回のW杯で日本サポーターのふるまいが世界の注目を集めたことは素直に誇らしい。日本代表の健闘も光ったが、日本式ゴミ拾いも堂々たる足跡を残した。》(7月4日)

 そこですか。「大仰ではあるものの」と書いているけど天声人語はサポーターのゴミ拾いが褒められたことが満足そう。日本のお行儀のよさが褒められたことに満足そう。サッカーよりそこ。

©JMPA

 読売新聞「編集手帳」(7月4日)もどこかうっとりしていた。『私のハートはストップモーション』(作曲・都倉俊一、作詞・竜真知子)の説明から入り、日本がベルギーに逆転されたシーンをこう記す。

《そのとき、テレビの前の何千万というハートが画像を静止させたことだろう。》

《くやしい。ただ強豪を追いつめた原口、乾選手の得点は今思い出してもジーンとする。放心の中で聞いた終了の笛だったけれど、期待以上にがんばってくれた西野ジャパンをたたえたい。♪こんな熱いショックはじめてよ》

 何を言ってるのだ。

「♪こんな熱いショックはじめてよ」と音符付きで締めてしまった読売・編集手帳師匠には「いいネタに気づくことができた」という満足感が漂う。

 それにしても『私のハートはストップモーション』は約40年前(1979年)のもの。さすが知識の引き出しが広すぎるというか、あるいはまさにおっさんジャパン代表というか。