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連載THIS WEEK

森岡 英樹
2016/11/03

新潟ショックで崩壊した東電再建シナリオ

source : 週刊文春 2016年11月10日号

genre : ビジネス, 企業

再稼働慎重派が逆転勝利
Photo:Kyodo

 東京電力が、債務超過の危機を迎えている。福島第一原発事故に伴う賠償と廃炉・除染の費用が膨らんでいるのが、その原因だ。

「経産省の内部資料によれば9兆円と見積もられていた賠償費用は12兆円に、廃炉費用は2兆円から6兆円に拡大する見込み」(電力アナリスト)

 一方、東電の純資産額は2・2兆円あまり。東電の広瀬直己社長も「債務超過となるリスクがある」として、政府に回避措置を要請している。

 東電の頼みの綱は、年2400億円程度の増益になる新潟県の柏崎刈羽原発の再稼働だった。ところが、新潟県知事選で再稼働慎重派の米山隆一氏がまさかの勝利。再稼働は不可能となった。

 東電が進退窮まったのを受けて、経産省が打ち出したのが分社化案だ。

「原発事業を、福島第一原発の賠償・廃炉を担い経営的に厳しい“バッド東電”と、それ以外の柏崎刈羽などの原発事業の“グッド東電”に分社化する。“グッド東電”は他の電力会社の原発事業と再編させる布石です」(同前)

 だが、他の電力会社は、東電との連携に及び腰だ。関西電力、九州電力、中国電力、四国電力の4社は原発の建設・運営で提携することを検討している。将来的には既存の原発事業を切り出して統合する可能性もある。

「東電と組みたくない西日本勢が先手を打った。分社化しても、東電の先行きは不透明なまま」(同前)

 そんな苦境に不安を募らせるのが、約7兆円を融資する取引金融機関80行だ。

「新潟ショックで、期待された東電の社債市場への復帰がほぼ絶望的となった。社債発行が今年度中にも再開され、債務の返済余力が高まるとみられていたのですが……」(金融関係者)

 最終的には、国有化も避けられないとの見通しが強まるが、ここにもハードルがある。

「国有化となれば金融機関への債権放棄への圧力も強まる。しかし、3・11の直後、経産省首脳が、メーンバンクの三井住友銀行首脳などを呼び、計2兆円の無担保融資を要請した経緯がある。マイナス金利で経営環境の厳しい金融機関がのめる話ではない」(同前)

 八方ふさがりの東電。Xデーは近づいている。