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オウム死刑執行とW杯に埋もれた「水道民営化」問題の“重要発言”まとめ

2018/07/07

 W杯での日本代表の活躍に湧き、オウム真理教の松本智津夫被告ら7名の死刑執行に驚かされた7月第1週だったが、7月5日、水道事業の運営権を民間に売却できる仕組みを導入することなどが盛り込まれた水道法の改正案の採決が衆院本会議で行われ、自民・公明両党と日本維新の会と希望の党などの賛成多数で可決された。

 老朽化が進む水道施設の改修を促すための改正案だが、一方で「水道の運営権を民間企業に移すと安定的な給水が維持できなくなる」という批判もある。“水道民営化”にまつわる発言を集めてみた。

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麻生太郎 副首相兼財務相
「この水道は全て国営もしくは市営・町営でできていて、こういったものを全て民営化します」

ハーバー・ビジネス・オンライン 7月6日

©文藝春秋

 水道法改正案が審議入りしたのは6月27日のこと。働き方改革関連法案に押されて審議入りは未定だったが、6月18日に発生した大阪北部地震により21万人以上が水道の被害を受けたことで、「老朽化した水道」という問題がクローズアップされ、一気に審議入りした。与党は22日に会期末を迎える今国会での成立を目指している。

 市町村などの水道事業者は人口減による収入減などで赤字体質のところが多く、老朽化した水道管の更新が遅れていた。水道法改正案は、民間企業の参入を促すことで水道事業の経営を効率化し、水道管の老朽化対策を急ぐというもの。そのため、市町村などが経営する原則は維持しながら、民間企業に運営権を売却できる仕組み(コンセッション方式)も盛り込んだ。

 自民党は以前から水道民営化を推進しようとしていた。麻生太郎氏による「この水道は全て国営もしくは市営・町営でできていて、こういったものを全て民営化します」という発言は、2013年4月にアメリカのシンクタンクCSIS(戦略国際問題研究所)で行われた講演でのもの。麻生氏は「水道の民営化」を目指すと断言している。

山口那津男 公明党代表
「大阪の地震の被災地に関わる与野党の方々の理解も得て成立をはかりたい」

日本経済新聞 6月27日

©文藝春秋

 今国会で水道法改正案の成立を主導しているのは公明党だ。山口那津男氏は大阪北部地震を引き合いに出して成立への意欲を示していた。また、井上義久幹事長も自民党の二階俊博幹事長との会談で、「水道の老朽化に対応しなければならない」と強調していた(日本経済新聞 6月27日)。

 公明党が水道法の改正に積極姿勢を示すのは、来年の統一地方選や参院選をにらんだ動きだとされている。水道事業の経営悪化は地方の生活に直結するため、3000人の地方議員を抱える公明党は水道法改正案の成立にとりわけ熱心である。