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2018/07/10

バブル崩壊、あいつぐ経済事件

 1991年といえば何よりバブル崩壊の年として記憶される。とりわけ7月には、バブル崩壊で失われた資金の処理に関する経済事件があいついで取り沙汰された。

 この前月には、野村証券をはじめ大手証券各社が、株価下落により損失を被った大口の顧客に対し巨額の損失補填を行っていたことが発覚、7月中には大蔵省が大手各社の特別検査に着手し(18日)、また政府の求めを受け、損失補填先のリストを大手各社は29日、準大手・中堅各社も31日に公表した。大手の損失補填先はじつに196法人・3個人におよび、公共・金融機関も含まれた。「損失補填」はこの年の流行語となる。

 このほかにも、91年7月1日には総合商社の丸紅と大手鉄骨加工メーカーの共和による架空取引が発覚し、その後、逮捕・起訴された共和の副社長の証言から、北海道のリゾート開発にからむ国会議員への贈賄もあきらかとなった(共和事件)。さらに同月23日には、大阪の中堅商社・イトマンから不動産開発や絵画取引などの名目で約3000億円の資金が引き出された「イトマン事件」で、同社元社長・常務ら関係者が商法の特別背任容疑で逮捕されている。また、富士銀行(現・みずほ銀行)など大手都市銀行による不正融資が発覚したのも、この7月のことだった。

イトマンとの絵画取引をめぐる特別背任等の容疑で逮捕された許永中氏 ©文藝春秋

経済至上主義への反動

「平成景気」とも「バブル景気」とも呼ばれる大型景気は、1986年12月からこの年2月まで51カ月間続いたとされる。いまでは派手なイメージで語られがちなバブル景気の時代だが、しかし多くの人はその恩恵にほとんど与れなかったのではないか。

 事実、91年7月6日に総理府(現・内閣府)が発表した「大都市圏における居住に関する世論調査」では、地価高騰にともない持ち家をあきらめ、借家で消費を満喫するという都市住民の実態が浮き彫りとなる。また、15日に労働省(現・厚生労働省)が発表した「所定外労働時間の削減調査」では、月平均の残業時間が50時間以上という労働者が12.5%と、1割を超えることがわかった。それなのに残業時間の削減が進まないのは、「事業活動に支障が出る」「収入が減少する」などの理由からだった。

 バブル崩壊は、戦後ひたすらに物質的豊かさを追求してきた社会を省みるきっかけにもなった。ちょうどこの時期には、新宗教が乱立し、占いなどがブームになったが、その背景にはそれまでの経済至上主義への反動もあったのだろう。

 91年7月10日発売の『文藝春秋』8月号には、当時、急成長を遂げていた宗教団体「幸福の科学」の大川隆法へのインタビューが掲載されている。オウム真理教が、数々の疑惑を指摘されながら、幸福の科学とともに「時代を代表する新宗教」としてメディアで再注目されたのもこのころだ。そのしっぺ返しは、数年後に来ることになる。

「幸福の科学」の大川隆法総裁 ©文藝春秋