文春オンライン

「感じが悪い」と生きていけないこの社会

「異文化」を「感じの悪さ」に翻訳してしまう“この国のかたち”

2018/07/12

 先日、当連載にてアロハシャツでうろうろしてたら職務質問されたというネタを書いたところ、なぜか近所の御茶ノ水幼稚園のママ友の間で「いま界隈で問題になっている変質者は山本さんではないか」とか勝手な噂を立てられたようで、こいつら本当に馬鹿なんだなと思うわけです。疑われて心当たりがある本人ならこんなのネタにするわけねえだろ。地域の世話人も兼ねてたっつーのに。そのうち証拠持って無慈悲に訴えてやろうと思います。

新宿区のダイバーシティの振り切れ具合

 で、実家の介護もあるのでこの方面からは距離を置いてるわけですが、実家周辺の保育園とかご一緒していると「専業主婦の勝手な噂が渦巻く千代田区界隈」と違って「共働きと外国人子弟がごちゃ混ぜになっている新宿区界隈」という新たな世界の地平線が拓けることになります。とにかく子供の数が多いのと、ダイバーシティ(多様性)という意味ではなかなかの針の振り切れ具合でとても刺激的です。朝、子供を送りに来るお母さんが「あっ、ひょっとしていま仕事帰りなのかな」と思わせる出で立ちや匂い、お父さんによく似た素敵なアフロで元気よく挨拶する女の子、乗りつけた外車の助手席から颯爽と降りてくる金持ち系男子もいれば、お祖父ちゃんお祖母ちゃんに手を引かれて眠そうにやってくる子たちもいます。

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 新宿区や中野区も外国からやって来られる方やご家庭が増えて、これに対応する行政も学校も大変なんだろうなと思うわけなんですが、やっぱり文化の違いからくる「あの人、感じが悪いよね」ってのは横行するようで、この界隈に足を向けて半年かそこらでママ友含め保護者同士の物凄い「断絶」を感じさせます。

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 もちろん、日本人家庭は近所同士固まってわいわいやっているのですが、問題は行事の内容やしきたりの分からない外国人家庭で、分からなければ分からないなりに質問してくれれば説明することはできても、突然とんでもないことをやらかしているように日本人からは見えるので、感じが悪いよねって距離を置かれて地域でも学校でも孤立するってことが横行するようであります。日本語もままならない異国で家庭を築き地域で暮らしていくはずが、単にその文化を知らなかったという理由で辛い思いをするというのは申し訳なく思うのです。