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振り込め詐欺に使用者責任?
ヤクザも注目“大親分提訴”

source : 週刊文春 2016年7月14日号

genre : ニュース, 社会

提訴後、記者会見する原告側弁護団
Photo:Kyodo

 弱きを助けて強きをくじく任侠道をヤクザが守るのは、政治家が政治資金規正法を守ること以上に期待できない時代のようだ。高齢者を食い物にする振り込め詐欺などの特殊詐欺にヤクザの大親分の責任が問われている。6月30日、特殊詐欺の被害者7人が、指定暴力団「住吉会」トップら7人の幹部の責任を問い、約2億2000万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴した。

「特殊詐欺事件で、暴力団の最高幹部の使用者責任を追及するのは初めて」

 同日開いた記者会見で、被害者弁護団は強調した。住吉会は、山口組に次ぐ7300人の勢力(2015年末時点)を抱える指定暴力団で、東日本を拠点とするヤクザのなかでは最大の組織だ。

「訴えられた7人には、西口茂男、福田晴瞭、関功という住吉会のトップ3が含まれています。組員の行為に対し、トップの『使用者責任』を問う暴力団対策法の規定が使われました。司法、警察関係者だけでなく、当の暴力団関係者も訴訟に注目しています」(全国紙社会部記者)

 住吉会トップの大親分で、総裁を務める西口は87歳。暴対法で住吉会が指定暴力団に指定された1992年時点ですでにトップだった。

「ヤクザのゆるやかな連合体だった住吉会をピラミッド型の組織に改編した最大の実力者です。福田は銀座に拠点を置く組織の出身でナンバー2を長らく務め、資金獲得活動でも活躍。関は、実権はいまだ総裁の西口が握っているものの、住吉会の会長職にある身です」(同前)

 なぜヤクザの最高幹部が特殊詐欺の責任を問われるのか。

 捜査関係者が説明する。

「ヤクザは従来、賭博や用心棒などは資金獲得活動=『シノギ』として認めても、詐欺や窃盗は任侠道に反するとして御法度を言い渡してきた。だが取り締まりが厳しくなり、最近は有力な資金源として、暗黙の了解で、詐欺や覚醒剤の密売など御法度とされたシノギに参入し始めている」

 警察庁によると、特殊詐欺事件で摘発された容疑者の3割は暴力団関係者が占める。今回、提訴された特殊詐欺事件でも住吉会組員らが逮捕・起訴されており、組織的な犯行とみられている。

 訴訟の結果如何で、年間500億円近い被害の特殊詐欺が抑制されるかも注目される。