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連載THIS WEEK

ずるいよプーチン W杯のどさくさにまぎれてロシアは値上げラッシュ

2018/07/15

 連日熱戦に沸くW杯。その盛り上がりの陰に隠れるようにしてロシア政府が重要な改革案を次々と発表している。

 ひとつは増税で、2019年1月から付加価値税を18%から20%に上げるというもの。食品や子ども関連用品は10%の軽減税率のままだが、それにしても高い。

 不人気な案件はついでにまとめてと言わんばかりに、年金制度の改革案も合わせて発表された。受給開始年齢を男性は60歳から65歳へ、女性は55歳から63歳へと段階的に引き上げていくという。ロシア人男性の平均寿命はここ数年徐々に延びていて現在約67歳だが、まだ60歳前後の州も多い。定年まで働いて年金保険料を払い終えた後は用済みというわけだ。

 これにとどまらず、電気・ガス・水道といった公共料金、ガソリン、パスポートの申請手数料など、W杯のどさくさにまぎれて怒濤の値上げラッシュが続いている。

「チーム全員が英雄」と称賛したプーチン大統領 ©文藝春秋

 背景には、5月にプーチン大統領が示した2024年までの内政指針がある。出生率の向上や所得増加など「9つの目標」を高らかに掲げたものの、お粗末ながら政府予算が足りず、国民にかぶってもらうという格好だ。目標には「平均寿命の伸長」も含まれていて、平均寿命を伸ばす予算を捻出するために年金受給年齢を先延ばしにするとは、なかなか皮肉の利いた“ロシアンジョーク”である。

 政府発表はW杯開幕当日というこれ以上ないタイミングだった。翌日の新聞各紙の一面は見事なまでにW杯一色で、増税や年金改革は中面でひっそりふれるのみ。ここまでコケにされれば、普段なら大規模デモが沸き起こりそうなものだが、国民の関心はもっぱらW杯に向かっている。

 今大会のロシア(FIFAランク70位)は「史上最弱の開催国」と揶揄されながら見事グループリーグを突破し、スペインを破る大金星をあげてのベスト8。プーチン大統領にとっては、この間、不都合な政治の問題からうまく目をそらせた形だ。準々決勝でクロアチアに敗れはしたものの、国民の多くはいまだ歓喜の中にある。

 W杯後、現実に引き戻され青ざめる国民を尻目に、プーチン大統領の高笑いが聞こえてきそうである。