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アートは「見る」より「読む」 西洋美術の知識はビジネスに役立つのか

『世界のビジネスエリートが身につける教養「西洋美術史」』(木村泰司 著)――ベストセラー解剖

2018/07/18
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『世界のビジネスエリートが身につける教養「西洋美術史」』(木村泰司 著)

 書店で盛況を極めるビジネス書と並ぶ本書。「美術本がなぜここに?」と見ると、ビジネスパーソン向けに書かれた本とわかる。

「これはビジネス書売り場に置かれてこそ、初めてターゲットに会える本。装幀に名画を入れると、印象が美術本に傾くので避けました」(宣伝プロモーション担当の松井未來さん)

 著者は『名画は嘘をつく』で人気の木村泰司氏。西洋美術は“見る”より、背景に込められた各時代ごとの「政治・宗教・風習・価値観」を“読む”ものという観点に立ち、ギリシャ美術から現代アートまでを網羅する。中は図版多数。

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「AIやシンギュラリティが浸透するにつれ、〈人間とは何か〉を問う哲学的なリベラルアーツの本が注目を集めています。この本もビジネス書×(かける)リベラルアーツ(=西洋美術)の掛け算としてよく売れています」

 書籍が好調なダイヤモンド社だが、書店営業では、根拠ある提案を心掛ける。

「アートはビジネスに役立つかといった切り口で、新聞に複数記事が出た時、それを見せて、『ビジネスに必要な教養として西洋美術史を読む新しい読者が生まれています』と書店さんにご提案したところ、確実に動きが出て来ました」

 今秋はフェルメール、ルーベンス、ムンクの展覧会が開催される。「1冊で2500年の美術史が読める」本書、学生や美術をより楽しみたい人たちへと益々広がって行きそうだ。

2017年10月発売。初版6000部。現在9刷5万2000部

世界のビジネスエリートが身につける教養「西洋美術史」

木村 泰司(著)

ダイヤモンド社
2017年10月5日 発売

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