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連載高野秀行のヘンな食べもの

中国人も絶句して拒絶した“胎盤餃子”、いざ実食!――高野秀行のヘンな食べもの

2018/07/17

※前回「中国最凶の料理、“胎盤餃子”」より続く

イラスト 小幡彩貴

 中国で超レアな胎盤をゲットした話の続き。

 大連を去る前日、親しい友人を六名ほど寮に呼んで「胎盤餃子パーティ」を開くことにした。事実上の「お別れ会」でもある。中国では餃子は縁起のよい料理とされ、誰かが旅立つときによく振る舞われる。つまり、お別れ会で餃子は定番なのだが、さすがに胎盤は尋常でない。「中国で胎盤が人気」といっても、あくまで一部の人の間であって、それも主に重病の人や高齢者が必要とするものだ。私の友人たちにとっても胎盤はまったく未知の無気味な存在だった。みんな、おそるおそるという感じでやってきた。

 まず、料理上手な友だちが炒め物や揚げ物など、ふつうの料理を何皿も手際よくこしらえた。

 つづいて、胎盤餃子の準備にとりかかる。小麦粉を伸ばして餃子の皮を作り、他の人はニラやニンニクを切って餃子の具を準備する。それから、いよいよ胎盤の調理だ。解凍したものを水洗いすると、表面のどす黒い血が流れ落ちて、縦横に走る青や赤の血管が鮮やかに浮き出て、まだ生き生きと脈打っている内臓に見えた。しかし感心して見ていたのはここまで。

 これを丸ごと、鍋で茹でるとすさまじい悪臭を発し、見てくれも腐りかけのカリフラワーみたいに様変わりした。いや、もっと正確にいえば、大きさも形も人の脳そっくり。だらりと垂れ下がった白いゴム質っぽいヘソの緒は脳髄にみえる。それがシューシューと湯気を吹き上げている様はグロテスクの一語に尽きた。

「うわあ……」