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西日本在住の地震学者が実践する「激甚災害」への備え方【防災用品チェックリスト付】

「防災パーティ」で「おいしい防災」を始めよう

2018/07/16

genre : ニュース, 社会

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家の中で一番命を落としやすい部屋は?

 なお、こうした方法は居間や書斎の方策だが、寝室では話がかなり異なる。睡眠時、人は完全に無防備になってしまうからだ。6400人ほどの犠牲者を出した1995年の阪神・淡路大震災は、早朝の5時46分に起きた。震度7の激震が家具を倒し、寝ている人を直撃したため、多数の死者とけが人を出した。

 人間は寝ている間がいちばん地震に弱いことを、決して忘れてはならない。したがって、寝室では家具を固定するだけでは不十分で、睡眠中に何が飛んできても大丈夫なようにしておかなければならないのである。具体的には、寝室に置いたテレビや置物が頭を直撃しないかどうか、直ちに確かめて戴きたい。ちなみに我が家では綿のぬいぐるみが棚に置かれているだけである。

地震は予知できない

 2011年に起きた東日本大震災の後、私の講演テーマは圧倒的に地震防災が増えた。というのは、東日本大震災以後の日本で地震が急に増加し、7年経った現在でも一向に減る兆しが見えないからである。

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 それには地球科学上の理由がある。ひとことで言えば、「東日本大震災をきっかけとして日本列島の地盤が不安定になったから」だ(拙著『日本の地下で何が起きているのか』岩波科学ライブラリーを参照)。具体的には、2011年に加わったストレスを解消しようとして、今後30年は地震が止むことはないと予想されている。さらに日本人は、「西日本大震災」(「南海トラフ巨大地震」を筆者はこう呼称して注意喚起している)という激甚災害の時限爆弾を約20年後に控えている。

 詳しくは、文春オンライン「大阪北部地震は『西日本大震災』の序章にすぎない」と月刊「文藝春秋」2018年8月号の拙論を、それぞれ見て戴きたいのだが、そのポイントは、内陸の直下型地震は現代の最先端の地震学をもってしても予知できないということである。

©時事通信社

何はともあれ「寝室のチェック」から

 ちなみに、巷では何月何日にどこでマグニチュードいくつの地震が起きる、という「予知情報」を出す方がたくさんいるが、科学的には根拠がない。したがって、「地震はいつどこでおきても不思議ではない」という前提で、専門家の私も日ごろから地震対策をしている。つまり、仕事中でもレジャー中でも寝室でも、「いまここで大地震がおきたらどう行動するか?」という意識から一時も離れることがない。よって、ご縁があって本稿を読んだ方は、「プロでもそうしているのだから自分も準備しよう」と考えて戴きたい。

 私は日常の防災対策を全ての講演会で話すのだが、なかなか定着率がよろしくない。講演を聴いて「なるほど分かりました」と頷く方は多いのだが、会場を出るとケロっと忘れて、皆さんタンスやテレビに囲まれた寝室で眠っている。これではダメ(元の木阿弥)なので、何はともあれ寝室のチェックから始めていただきたい。