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捜査当局も注視 13人が生還したタイの洞窟は「麻薬密輸ゾーン」

 6月23日、タイ北部チェンライ県のタムルアン洞窟を探険中、大雨による増水のために身動きがとれなくなった少年サッカーチームの11歳から16歳の選手12名と25歳のコーチ。洞窟内の水位上昇と酸素不足というタイムリミットが迫る中、7月10日夜までに全員が奇跡的な生還を果たした。

 13名の生存が確認されたのは、行方不明から9日間が過ぎた7月2日。暗闇と泥水で視界ゼロの中、英国の潜水チームが入り口から約5キロの地点で彼らの体臭に気付いたのだ。少年らに潜水の基礎を教え、専門のダイバーと一緒に脱出する方法が採用されたが、救出用物資を運んだ元タイ海軍特殊部隊のダイバーが、帰り道で酸素不足に陥り死亡している。

「困難を極めた救出劇が幕を下ろすと、今度は救出された少年たちの生い立ちや家族に注目が集まりました。コーチと少なくとも3人の少年は、タイ北部の山岳民族の出身。中には5カ国語を操り、地元の学校で授業料や給食費を免除されるほど優秀な少年もいますが、タイ国籍を保有していないことがわかったのです。タイ国内では『彼らに国籍を与えるべき』と運動が湧き起こっている。スリリングな救出劇や人間ドラマに目をつけ、すでに複数のハリウッド映画関係者が現地入りし、映画化の準備に取りかかっています」(現地紙記者)

ハリウッド映画に? ©共同通信社

 映画製作やタムルアン洞窟の観光地化が取り沙汰され、にわかに脚光を浴びるチェンライ県。だが実は、タイ、ミャンマー、ラオスの3カ国が国境を接するこの一帯は「黄金の三角地帯」と呼ばれ、2000年代初頭までは全世界に流通するヘロインの大部分を密造する世界有数の麻薬地帯だった。特にタイ、ミャンマー国境沿いの高地はヘロインの原料となるケシ栽培に適しているとされ、長年にわたりそこに住む山岳民族の収入源となっていた。

「国際社会からの圧力を受け、ミャンマー政府が代替作物の作付けを奨励するなどケシ栽培の減少に一定の成果を上げた時期もありましたが、根絶したというには程遠い。タムルアン洞窟のあるパホムポック国立公園は、今も昔も麻薬密輸業者の密輸ルートの1つなのです」(捜査関係者)

 この現実が映画に描かれることはないだろう。