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連載クローズアップ

亡き人を想う心を優しく包む「有田焼の骨壺」が、いまブーム

深川祐次(株式会社香蘭社代表取締役社長)――クローズアップ

2018/07/20
深川祐次さん

 7月、8月はお盆の季節。先祖を想い、大人から子供まで、手を合わせる大事な日本の行事の1つだが、ここ数年、“骨壺”の世界に変化が起きている。

 高級陶磁器メーカーが見た目も美しい、様々な柄やデザインの骨壺を発売して、評判を呼んでいるという。佐賀県の有田焼の老舗、創業330年を迎える香蘭社が、この骨壺ブームの火付け役である。

「およそ30年前、社員のお父様のご葬儀に参列して、斎場の支配人の方とお話ししたとき、『数年したら、葬儀が変わってきますよ。故人が好きだった音楽を流したり、骨壺も白一辺倒じゃなく、華やかで、立派なものが喜ばれる時代になるでしょう』と言われました。そこで、うちもやってみるかと取り組み始めたのです」と社長の深川さんは振り返る。

 同社は明治政府に依頼されて日本初の碍子(がいし/電柱に取り付ける白い磁器製の部品)を製造。皇室献上品など、高級陶磁器ブランドとして発展し、瑠璃色やグリーンの地に蘭の柄をあしらった食器類は、長らく結婚式の引き出物の定番だった。

「ブライダルが社の主力商品だった頃は、骨壺はイメージが合わないからと細々やっていたんですが、本格的な高齢化社会の到来と共に、斎場でのカタログ注文を通して売れ行きがぐんと伸びてきました」

 骨壺の意匠は多様。胡蝶蘭、翠蘭(すいらん)、オリエンタル蘭など、香蘭社のシンボルともいうべき蘭の絵柄の入ったものはもちろんのこと、すっきりした白地に山水画や複雑なカッティングを施したものや華やかな桜やバラの柄、明治時代のデザインを復刻したものもある。

香蘭社といえば、蘭の絵柄が有名。グリーンとルリ色の地に特徴がある。傷がひとつでもあれば、すぐ目に付くほど、表面は精度高く、磨き上げられている 写真提供・香蘭社
左:男性用に人気のあるのは山水画のシリーズ/右:蘭シリーズの中から春蘭。他に、胡蝶蘭、オリエンタル蘭、翠蘭などがある 写真提供・香蘭社
故人の好きだった花として、「吉野桜」を選ぶ人も多い。ふたの形状は家型(左)と筒型(右)の2種類がある 写真提供・香蘭社
究極のシンプル。有田焼の白地が美しい、ブリリアンカットを施したデザイン 写真提供・香蘭社

 大きさは東日本・西日本の地域差を考慮して、5寸から7寸の骨壺のほか、手元に置いておける可愛らしい2.5寸(高さ9センチ)のサイズも好評。中心価格帯は2万円台から7万円台。

「『こんなきれいな骨壺があるなら』と入れ替える方も多いですね。オーダーではお顔写真やゴルフのベストスコア表を全面に、と注文されたご家族もおいででした」

 故人のための骨壺だけでなく、自分用に好きな骨壺を求める人も増えている。“生きること・死ぬこと”に向き合ういまの日本人の気持ちが骨壺への関心の高さに表れているのかもしれない。

「当社では骨壺はすべて手作業で、素焼きの削り仕上げ作業も2人しかいない職人が担当しています。有田焼は日本が守って来た陶磁器の文化の1つ。骨壺をきっかけに、有田焼を皆さんの生活の近くに、たとえば若い方たちにも有田焼の食器を手にとって頂けたら嬉しいですね」

銀座6丁目に立つ銀座香蘭社 写真提供・香蘭社
銀座香蘭社の店内 写真提供・香蘭社
佐賀県の有田本社 写真提供・香蘭社
有田に陶磁器の技術がもたらされたのは1616年。中から発光しているような明度の高い白地、滑らかな表面に色鮮やかな模様が有田焼の真髄。香蘭社は皇室御用品、美術品、食器のほか、日本人の生活を支える碍子(がいし)を経営の柱にしてきた。近年では新しい素材ニューセラミックも手掛けている 写真提供・香蘭社
有田本社の古陶磁陳列館。有田ショールームの2階にあり、 無料で見学できる 写真提供・香蘭社
クラシックで落ち着いた雰囲気の有田本社ショールーム 写真提供・香蘭社

ふかがわゆうじ/1957年、佐賀県出身。東海大学工学部卒業。日本マクドナルド株式会社に勤務した後、87年、香蘭社に入社。同社営業部、香蘭社商事電力事業部などを経て、97年、香蘭社・香蘭社商事の取締役に。2007年、香蘭社グループ6社を合併、存続会社は株式会社香蘭社。13年より現職

香蘭社ホームページ
https://www.koransha.co.jp/

有田町観光協会「ありたさんぽ」
https://www.arita.jp/