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髙見澤俊彦、初小説を語る「主人公との共通点はハメをはずしきれない性格くらい」

著者は語る 『音叉』(髙見澤俊彦 著)

『音叉』(髙見澤俊彦 著)

「メリーアン」ほか数々の名曲で知られ、結成45周年を迎えるTHE ALFEEのリーダーが上梓した初小説『音叉』が話題を呼んでいる。筆名も“髙見澤俊彦”と音楽活動時とは表記を改め、新人作家として一から執筆に挑戦した。

「読書はずっと好きだったとはいえ、自分に小説が書けるとは思ってもいませんでした。一冊書き上げたことに達成感はありますが、プロの小説家になれたかというと、まだおこがましいというのが実感です」

 読書についてのエッセイを寄稿した雑誌の編集者から依頼を受け、「僕が、小説を?」と半信半疑ながらもプロットを練り始めた。模索の末、「これなら書けるのでは」と手応えを感じたのが“音楽”だった。

「僕が高校生だった70年代はロックバンドの初来日ラッシュで、憧れのアーチストの生の音に触れてすごく刺激を受けた。あの時代と音楽を小説で描いてみたいと思いました」

 1973年、平凡な大学生・雅彦は高校からの仲間と組んだバンドでデビューを目指す傍ら、学生運動に染まる才女やグラマーな同級生、奔放な先輩らとの恋愛模様にも振り回される。

「時代背景こそ、僕自身が青春を過ごしたのと同じ時ですけれど、主人公の雅彦と僕はまったくの別人格にしました。共通点といえばハメをはずしきれない性格くらい。あ、でも『女性のほうが進んでるなぁ』というのはあの頃感じたままが反映されていますね(笑)」

たかみざわとしひこ/1954年生まれ。73年結成のTHE ALFEEリーダー。83年「メリーアン」ヒット以降、日本の音楽シーンを代表する存在であり、コンサート通算本数は日本のバンド最多の2600本を超え現在も更新中。ソロ活動やラジオ番組等でも活躍中。

 進歩的な彼女達に雅彦が連れていかれるのは、ロック喫茶「DJストーン」や“原宿の社交場”「レオン」、ディスコ「赤坂ビブロス」。詳細な描写に70年代カルチャーの華やぎが蘇る。

「自分でもよく覚えているなと思います。当時の僕にとっては大人過ぎる世界で少し苦手だったんですけれど、記憶は鮮明です。とにかく最先端の人、モノが集まる場が東京に色々とあった時代でしたね」

 東京のノンポリ大学生が過ごす平凡な日々は、思わぬ悲劇に破られ、雅彦はデビューか友情かの選択を迫られることに――。

「どういう物語になるにしても、前を向いて進む話にしたいという事だけは最初から決めていました。人と人を繋ぐという意味では言葉も音楽も恋愛も同じ。互いに共鳴できる“音”を見つけて成長する雅彦達を描けていればと思います」

 チューニングの道具である“音叉”というタイトルの意味が胸に残る、爽やかな青春群像だ。

『音叉』
平凡な大学生・雅彦は高校からの仲間と組んだバンドでデビューを目指す一方、個性的な女性達に翻弄される日々。だが、思いがけない悲劇で夢か友情かの選択を迫られ、さらにある歴史的事件で恋愛にも影が――。70年代の世情を織り混ぜつつ、音楽を知り尽くした著者ならではの筆致で描いた青春バンド小説。

音叉

高見澤俊彦(著)

文藝春秋
2018年7月13日 発売

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