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湊かなえが高校時代に出会った「ミステリーを学んだ一冊」とは

デビュー10周年インタビュー

 デビュー10周年を迎える作家の湊かなえさん。新作『未来』に結実したデビューからの歩み、そして、作家生活の原点となる作品とは?

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湊かなえさん ©文藝春秋

――『未来』は、父を病気で亡くした上に、心を閉ざしてしまった母と2人で暮らす10歳の章子(あきこ)が主人公です。子供が主人公の物語を書こうと思ったのは、どのようなきっかけからですか。

  これまでも中高生の話は書いてきましたが、高校生くらいになれば、自分で何かを選んだり、逃げたりできます。でも、いまニュースを見ていると、逃げ場のない小学生くらいの子供がつらい目に遭っている。そういう子供に目を向けられないか、と考えたのが始まりでした。

――物語は、章子のもとに20年後の自分から手紙が届くことから始まります。母との追いつめられた生活、祖母から知らされた両親の重い過去、さらに学校でのいじめなど、絶望的な生活の中で、章子は未来からの手紙を本物だと信じ、30歳の章子に向けて、日々の生活に触れた返事を書き溜めていきます。

  私自身、章子くらいの年齢の時にしんどくなって、将来の自分に向けて、せっせと手紙を書いていたことがあるんです。きっかけは小6の時、ノストラダムスの大予言が流行(はや)って、学校で2000年を無事に迎えられたら開封するタイムカプセルを埋めることになったこと。それで、27歳の自分に手紙を書いて「あなたは何をしていますか」「結婚していますか」と質問したり、「何をしていても頑張ってください」となぜか上から目線で応援したり(笑)。日記ではなくて手紙を書くと、ポストに投函しなくても、誰にも言えない気持ちの受け取り手がうまれる。そのことで、気持ちを外に出すことができたし、27歳のなりたい自分を想像することで前を向けた。章子は家出もできないし、助けてくれる人もいないけど、未来の自分に手紙を書いている間は前を向ける。それも未来の自分からの手紙への返事なら、より希望をもって書ける、と思ってあの形式にしました。

――後半は、章子の友人・亜里沙(ありさ)、章子の父らの視点で物語が語られていきます。それぞれが重大な過去を抱えている息苦しい展開ですが、章子が大きな決断をするラストまで、登場人物たちは希望を失っていない印象があります。