文春オンライン

連載テレビ健康診断

「いいのかこれ!」怖ろしい妄想が止まらない番組『ポツンと一軒家』――青木るえか「テレビ健康診断」

『所&林修のポツンと一軒家』(朝日放送)

2018/07/21
note

 今どきテレビで怖ろしいことなど起こらないが、たまに「いいのかこれ!」とふるえることがある。

『ポツンと一軒家』という番組は、衛星写真に写った「山奥の一軒家」に突撃する番組。他にもそんなネタをやってる番組も見たような気がするが、ローカル線バスに乗って田舎訪問番組の雨後の筍ぶりを見てるので気にしない。

 山の中の一軒家を訪ねていく。麓で聞き込みをして、確かに人が住んでるらしい。クルマの行けない道になって歩いてそこにたどりつく。一軒家だと思っていたら実は二軒あって、最初の一軒にはおじいさんが1人いる。

ADVERTISEMENT

 そこでおじいさんに取材を申し込んで現在の暮らしぶりや、生い立ちなどをきく。NHKの『ファミリーヒストリー』ぽさも漂わせつつ笑顔でその訪問は終わる。

 はっきり言ってものすごく面白い。そして怖い。

 山の中の一軒家。番組としては「行ってみたら空き家」が「失敗」みたいだが、最大の失敗は「へんな人がいる」ではないだろうか。これが死体や犯罪者なら単に通報してワイドショーのネタにするだけだが、「アブナイ」ぐらいの人が出た時がいちばんまずい。現代の座敷牢みたいなものがあって雪男みたいなのがうずくまっている……そういうのを無意識に期待しているのだ。麓の聞き込みの時点で「あー、あそこは……」と口ごもる村人、とか出てくるんじゃないかとドキドキする。

 しかし、番組にそんな人が出てくるわけがない。そもそもこのおじいさんにだって事前にぜったいアポ取ってるに決まってるし。

 しかし、山の中にぽつんと二軒あるわけで、もう一軒の隣の家は「親戚だが、付き合いはないそうだ」と明るくナレーションが言って次に進む。

※写真は朝日放送『所&林修のポツンと一軒家』7/1放送分より

 ええっ。しかしそれはつっついてはあまりに怖そうな話である。すごくいやな感じの土地争いとか……ドロドロの……と、ものすごくいろいろ妄想が広がってとまらない!

 別の一軒家訪問で、いかにも気になるのに何も触れないようなことはいくらでもあるのに、ここでなぜそんなネタをサラリと入れ込むのか。

 それはやはり、制作側としても「この番組は怖ろしいものを秘めている」ということを匂わせたいのだ、きっと!

 この『ポツンと一軒家』は不定期放映であるが、今号発売直後の日曜日にも放映がある! この秘められた怖ろしさをぜひ味わってほしい。

▼『所&林修のポツンと一軒家』
朝日放送 日(不定期) 18:57〜19:58
https://www.asahi.co.jp/sp/potunto/

「いいのかこれ!」怖ろしい妄想が止まらない番組『ポツンと一軒家』――青木るえか「テレビ健康診断」

X(旧Twitter)をフォローして最新記事をいち早く読もう

週刊文春をフォロー