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芥川賞受賞・高橋弘希インタビュー「小説と将棋は似ているかもしれない」

鮮やかな描写を支える「見える」力

2018/07/23

genre : エンタメ, 読書

デビュー作はいきなり芥川賞候補に

 2014年に『指の骨』で新潮新人賞を受賞して、デビューを果たした。太平洋戦争を題材にとり、戦争を知らない世代による戦争小説の誕生と話題になった。同作はいきなり芥川賞候補にも挙げられた。

 2017年には『日曜日の人々(サンデー・ピープル)』で野間文芸新人賞を受賞。同作には自傷行為が取り上げられたりと、扱う範囲がひじょうに幅広い。テーマはどこからやってくるのか。

「どうでしょう、単純にいろいろ書きたくなる。毎回テーマを掲げているという意識はあまりなくて、そのとき興味のあることを書いていきます。興味の対象は、そのときどきでわりと移り変わっていくので、作品テーマも違うものになりやすいのかと」

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「一時期はプロを目指そうかというくらいハマりました」

 では最近の興味の対象は?

「直近は将棋ですね。というか将棋は定期的にハマってます。今は観る専門なんですけど、一時期はプロを目指そうかというくらいハマりました。でも調べてみたら、小学生のころには奨励会に入ったりしないとプロになれないらしいのであきらめましたが。そのときすでに大学生だったので。

 将棋って、小説を書いていく過程と似ているところがあるんです。『なんとなく』で進んでいくところが。

 羽生善治さんが、この局面はこんな形だからなんとなくこの手がいいんじゃないか、といった具合で対局が進んでいく、みたいなことを、どこかで言ってたんですよね。

©文藝春秋

 小説も似たとこがあって、この場面はこんな形だから、なんとなくこんな文章がいいんじゃないかな、というふうにして物語が進んでいく。ある場面ができると、そこからまたなんとなくこんな形がいいんじゃないか、と進んでいく。

 棋士の方々が本当はどう考えているのかはわかりませんが。そのあたりは興味深いですね」

 ならば次は将棋をテーマにした小説を執筆なさる?

「いや、いまのところ将棋小説を書く予定はないです(笑)」

送り火

高橋 弘希(著)

文藝春秋
2018年7月17日 発売

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写真=山元茂樹/文藝春秋 

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